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「はい、タオル」
「ありがとうございます」
ぽたり、ぽたりとカザから水滴が滴り落ちる。服も髪もぐっしょり濡れていて、足元は小さな水溜まりになっていた。
「軽く拭けたら中入り。替えの服貸したるわ」
「はい…、すみません、ありがとうございます」

玄関の前でカザと並んで体を拭きながら、暗い空を見上げる。ざあざあと、バケツをひっくり返したような激しい雨が地面を叩いて、時折遠くで雷鳴が聞こえた。
雨が降り出したのはものの十数分前。コンビニ帰りにカザに偶然会って、一緒に歩いてたら雲行きが怪しくなっていき、天気予報見たー?雨降るって言ってたっけ。なんて会話をしていたら、案の定降り出した。
カザはサッカー帰りやったみたいやけど傘は持っておらず、勿論俺もコンビニ行くだけの為に傘を持ち歩く事もなく、雨を防ぐ術はなかった。幸いな事に、俺が居候中の寺のすぐ側やったから覚悟を決めて雨の中を走り、そして現在に到る。
とりあえず服から水が落ちない程度には拭けたので、カザの背中を押して敷居を跨いだ。

部屋に上げたはいいものの、このまま着替えさせたところできっと風邪をひいてしまうだろう。
「カザ、風呂入ってき。その間に着替え用意しとくわ」
「え、でも…」
「えーからえーから。そのままやったら風邪ひくで」
戸惑うカザの背中を押して、半ば無理矢理脱衣所に放り込んだ。こうでもしなければ、遠慮して入らんやろうからな。

「ジャージでええかー?」
「あ、はい」
部屋から取ってきたジャージの上下を脱衣所に置くと、磨りガラス越しに返事が返ってきた。うっすら見えるシルエットがなんかエロい。不覚にもドキリとしてしまい、慌てて頭を振って邪念を振り払った。


もうこれは拷問じゃないだろうか。
風呂から上がったカザは、一回り大きい俺のジャージを着ているせいで袖からは指先がやっと出ている程度だ。それに加え肌は赤く色付き、慌てて上がって来たせいだろうが髪もしっとり濡れている。
そりゃあもう、堪らんと言うかムラムラすると言うか。押し倒したい衝動を押し殺すのに必死だ。
手招きしてカザを呼び寄せる。
「わっ」
頭にバスタオルを被せて、水分の残る髪をがしがしと拭いた。折角体を温めたのに、このまま帰したら結局風邪をひいてしまう。
ふわりと香ったシャンプーの匂いが当然俺の物と同じで、ドキドキを打ち消すようにカザの頭を拭く手を大袈裟に動かした。

「ありがとうございました」
カザは礼儀正しく俺に向かって一礼した。顔を上げ様にカザの後頭部に手を回し、そして軽く唇を重ねた。
「気ぃつけて帰りや」
ニィッと笑うと、カザは顔を真っ赤に染めた。
雨はすっかり上がり、空には明るさが戻っていた。










晴天の下には水溜まり













2010.2.3



あきゅろす。
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