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昨日は雪だった。今日は降ってこそいないものの、気温は昨日と大して変わらないと思う。
頬を打つ風が冷たい。どんな状況であれ、サッカーが出来るのは嬉しいけれど、流石にこの寒さでは足先が動くか不安だな。
なんて考えながらがらんとしたグランドを眺めている。早く着きすぎたようで、まだ誰も登校していない。
…と思っていたら、ふと視線を感じた。そちらに首を捻ると、不破くんの顔がすぐ真横にあった。

ビックリして肩が跳ねた。不破くんって気配を断てるんじゃないかと、時々本気で思う。
あまりに距離が近かったので、ほぼ無意識で半歩後ろに下がった。しかし、またすぐに距離が埋められた。
何、どうしたの不破くんどういう状況なのこれ!普段から考えが読めない人だけど、今回は特に分からない。
息が掛かる程の距離で、真っ直ぐに目を見られたら、そりゃあもう固まるしかない。

「不破、くん?」
思い切って声を発してみたけれど、状況は打破出来なかった。
こう至近距離で見られては視線を逸らす事も出来なくて、不破くんの真っ黒な瞳に映る自分の姿を、落ち着きなく見つめ返した。

先程まで髪を揺らしていたのより一際大きい冷たい風が、びゅう、と吹き抜けた。耳が痛くなる程の冷たさに、首を竦めて瞳を伏せる。
髪が風に煽られて、露になった首筋から冷気が流れ込んだ。
背筋がゾクリとして体が振るえた、けれど、僕が肩を跳ねさせた原因はそれだけではない。

不破くんの手が、僕の髪に触れていた。髪を掬い上げる度に、手の甲が当たる。関節が骨張っていてゴツゴツしていて、僕の手なんかよりずっと大きい。
「?、不破くん?」
漫画だったら、僕の頭上にハテナマークがいっぱい飛ばされている事だろう。
でも、不破くんに触られる事は決して嫌ではなくて。むしろ、心地良い。

「よく分からない」
「へ?」
脈絡のない言葉を理解しきれず、間抜けな返事しか出来なかった。
「唐突に風祭に触れたいと思ったんだが、理由が分からない」
「…何でだろうね?」
不破くんにも分からない事を僕が分かる筈もなく、二人して首を傾げた。

「今、キスしたいとも思った。…俺は風祭が好きなんだろうか」
顔が一気に熱くなった。真面目な顔でそれを聞かれて、僕はどうすればいいんだろう。
「わかんない、けど、」
未だ至近距離にある不破くんの瞳を、真っ直ぐ見上げる。顔のほてりはひかない。その上、羞恥のせいか何なのか瞳が潤んできた。
「不破くんにキスされるのは、嫌じゃないよ」










そして重ねた唇













2010.1.7



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