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12月25日、クリスマスという年末の一大イベントで、世間は昨日から浮かれっぱなしだ。きっと今頃世の子供達は、プレゼントを確認しようと普段より起き出しているのだろう。
しかし、勿論俺には関係ない。サンタを信じるような年齢でもないし、サンタに扮してプレゼントを届けてくれる人物の宛もない。
そして今日も今日とて仕事の予定はなし。となれば、こんな寒い日にわざわざ早起きする理由もないので、俺は浮上しかけた意識をもう一度夢の中へ沈めた。

ところがそれは、敢え無く妨げられる。
体を揺すられ、しかも何となく肌寒い。布団はしっかり被っているのに。
そういえばそもそも俺の眠りが浅くなった原因は、どこからともなく感じた冷気だったな。ああ、神楽辺りが俺の部屋の戸を開け放したのかな。
そうだ、それで妙に風通しがいいに違いない。
うまく回らない頭でそう結論付けるが、それはあっさり打ち消される事になる。

「旦那、」
鼓膜を揺らした馴染みのある声。考えるより早く、俺は起き上がっていた。
「沖田、くん?」
眠気なんざ吹っ飛んでしまった。
何で沖田君が此処に?まだ頭は覚醒しきっていないのか、うまく働いてくれない。
ポカンとしながら沖田君を見詰めていると、よく見ていないと分からない程微かに、彼は笑った。
「おはようございます」
「…、おはよう」
「今日は旦那に、プレゼント貰いに来たんでさァ」
プレゼント?クリスマスだからってか?
万事屋の貧乏さは、沖田君もよく知っている筈だが、それなのに俺にプレゼントを要求しようというのだろうか。
だいたい、稼ぎなら彼の方がずっと上だ。悲しいが現実だ。
「プレゼントやる金なんて、持ち合わせてねぇぞ」
「そんな事わかってまさァ」
表情の起伏は少ないが、それでもどことなく愉しそうに見える。こういう時はたいていろくな事にならない。

「何、手料理とか?材料費出してくれるなら作るけど」
慎重に尋ねると、彼はゆっくり首を横に振った。眉をひそめて見返すと、今度ははっきり笑った。
「金のかからないプレゼントって言ったら、大体予想はつくでしょう?」
ニコリと笑う沖田君に対し、俺はヒクリと頬が引き攣る。
俺がリアクションを起こす前に間近に迫られ、発しようとした声ごと唇を奪われた。

「まァ、今はキスだけで我慢しておいてあげまさァ」
今はってとこに引っ掛かりを覚えるが、それはさておき。
後でケーキを奢らせよう、うん、それでチャラだ。今度は俺から唇を奪い返した。












愛を運んで、サンタクロース

















2009.12.25


あきゅろす。
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