[携帯モード] [URL送信]
 




一歩外に出れば街にはクリスマスソングが流れ、キラキラと飾り付けられたツリーに直面する。様々なイルミネーションで華やかに光り輝く街並みは、それだけで気分を高揚させる。
だと言うのに、そんな風景を窓ガラス越しに眺めながら、僕の心は不安に満ちていた。


掛け時計が6時を告げるメロディーを流す。
シゲさんは5時頃にこちらに来ると言っていた。でも未だ現れる様子はない。流石に遅い、もしかして何かあったのではとつい10分前に電話をかけたのだが、聞こえて来たのは留守番電話サービスのアナウンスだった。

本当にどうしたんだろう。こんな事今までなかったのに。
そういえば彼はよく学校には遅刻気味に現れるけれど、僕と待ち合わせる時は待たされた事はなかったなぁ。思わぬ事実に気付いてちょっと嬉しくなるけれど、状況が状況だけにそうも言っていられない。
来る途中に何かあったのかな。
そう考えて真っ先に思い付いたのは交通事故だった。いやいやと打ち消すように首を振るが、一度頭に浮かんでしまったら中々振り払えない。
どんどん後ろ向きになって行く思考に、不安は煽られっぱなしだ。


ピンポーン

不意に、来客を知らせてインターフォンが鳴った。
それを聞いたと同時に反射的に玄関に向かって走り出していた。来客が誰かも確認せずに、勢いよくドアを開ける。
「遅なってごめん!」
「シゲさん!」
そこには待ち焦がれた人が居た。
走って来たらしく、彼は肩で息をしている。12月も後半だというのに、額にはうっすら汗まで浮かんでいる。
そんなシゲさんを部屋に上がるよう促し、僕は飲み物を取りに冷蔵庫に向かった。事故等ではなかったようなので、とりあえずは一安心。

「はい、どうぞ」
「ん、ありがとう」
コップを渡してシゲさんの隣に腰掛けると、シゲさんは一気に飲み干した。ちょっとびっくりして、おかわりいります?と尋ねたけどいや、いいわ、ありがとうと彼は首を横に振った。
「カザ」
隣に座るシゲさんを見上げようとすると、赤い何かに阻まれた。
「…靴下?」
毛糸のそれを、彼は微笑みながら黙って手渡した。受け取ると、中身がぎっしり詰まっているようだった。
「わ、あ」
何だろうかと思って中を覗くと、そこには数え切れない程の色とりどりのハートの形の飴が詰め込まれていた。
「俺の気持ち。なるべくいっぱい詰めようと思ったら、遅くなってもーてん。ごめんな」
すまなさそうに眉を下げるシゲさんに、ブンブンと勢いよく左右に首を振る。
「嬉しい…!ありがとうございます」
溢れんばかりのハートに目を輝かせると、彼はそっと僕を抱きしめた。
「俺の気持ち、伝わった?」
「はい、」










くつ下には愛を詰めたんだ













2009.12.25



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!