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温かい日差し。散歩の途中だったが、なんだか眠くなった来た。
調度その時、土手に一本の木を見つけた。それに回り込んで腰を下ろすと、葉に遮られて僅かにだけ日光が届く。
照度も温度も申し分ない。背中をその木に預けると、徐々に瞼が下がって来た。
それに抵抗する理由も特にない。そのまま瞼を閉じると、直ぐに睡魔に飲み込まれた。






――




「銀時、こんな所におったのか。」
どれ位時間が経ったのだろうか、ふと隣で声がした。暖かく、優しい声。
薄く瞼を持ち上げるが、隣に座っているらしい人の顔は影になり見えない。
瞬きをすると焦点が合わなくなり、再び瞼が重くなった。
隣で俺を呼ぶ声が聞こえるが、口を開く気力もなく眠りについた。






――




「銀時?寝たのか?」
久しぶりに帰って来た地球。一番会いたかった、愛しい人の家に真っ先に足を向けた。
しかし、皆出払っているようで家には鍵が掛かっており、呼びかけても返事がなかった。
滞在できる日数は限られている。一刻も早く会いたくて、当てもなく探し回りようやく見つけたその人は木の陰で寝息を立てていた。
「不用心じゃのう。」
全く、いくら人目に付きにくいからといっても野外なのだ。それをこんなにも気持ちよさそうに眠っているなんて。
隣に腰を下ろし、彼の頭をそっと自分の肩に乗せる。銀の髪ごしに見える寝顔は何とも無防備だ。
「誰かに襲われたらどうするんじゃ。」
言いながらも、わしの口元には笑みが浮かんでいた。





――




とても、とても暖かい。何かに包まれているような安心感。
「……ん…。」
ゆるゆると目を開ける。緑の雑草が目に入り、土手で昼寝をしていた事を思い出す。
「起きたか?」
隣から心地よい声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。
「…辰馬!?」
「銀時、久しぶり。」
笑う辰馬の顔を見て頭が一気に覚醒した。帰って来てたのか。いつの間に。
それと同時に先刻の暖かさの原因はこいつだったのか、と納得した。
身体的にも大きい奴だが、そういう意味でなくこいつは大きいヤツなのだ。だからこいつの側に居ると包み込まれるような感覚がする。
「いつの間に帰って来てたんだ?」
そういえば俺はこいつに体重を預けていたようだ。傾けた首をそのままに尋ねる。
「今朝着いたところじゃ。一番におんしの家に行ったんじゃが、誰もおらんかった。」
「ああ、朝散歩に出たっきりだったからなァ。」
神楽が定春の散歩に出た後に来たのだろう。新八は確かライブに行くとか言ってた気がするし。
「それにしても、不用心すぎるぜよ。こんな所で寝るなんて。」
「大丈夫、そうそう気付かれねーよ、こんなとこで寝てても。」
「でもわしは気付いたぜよ。」
「お前だからだろ。」
そう言って立ち上がり、くるりと辰馬を振り返った。特大の笑顔のおまけ付きだ。
「…っ、……そうじゃな、愛の力じゃ。」
寒ぃと言えば、つれないのぉと返って来た。

立ち上がった辰馬と連れ立って歩きだす。
「いつまでこっちに居るんだ?」
「一週間居れればいい方じゃ。」
「相変わらず忙しそうだな。」
愛しい人との再会。それはあまりに短い期限付き。
けれど寂しいなんて感じない。何を置いても一番に自分の元に来てくれるこの人。それだけで会えなかった時間なんて吹っ飛んでしまう。
さあ、限られた時間をどう過ごそう。

「銀時、散歩の続きに行かんか?」
笑って手を差し出す彼。
そうだな、とりあえず目的もなく歩くのも悪くない。
こちらも笑ってその手を取った。













散歩

















2009.3.9


あきゅろす。
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