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日が落ちるのも早くなり、寒さから逃れるように人々は足早に家路につく。それにも関わらず、俺と旦那は自分達のペースを崩す事なく、ゆっくりあてどなく歩いていた。

「もうクリスマスか…。早ェですねィ」
何処からか流れてきたクリスマスソングに耳を傾ける。
「気ィ早ぇな、まだ12月入ったばっかりだぜ?」
そう言いながらも、点灯し始めたイルミネーションを目に映す旦那はどこと無く楽しそうだ。
人事のように言っているが、かく言う俺の心も弾んでいる。やっぱり祭となれば浮かれるものだ。

ただでさえ遅かった歩調が、更に遅くなった。
流れるメロディーに合わせて旦那がジングルベルを口ずさむ。最初は順調に歌っていたので、微笑を浮かべながら耳を傾けていたのだが、途中から雲行きが怪しくなり最終的に鼻歌になっていた。
「歌えてねぇですぜ」
「いーんだよ、こういうのは心意気が大事なんだ」
何だそれ。俺が笑うと、旦那も自分で言っておきながら『わかんねー』と笑った。

「旦那ァ」
「んー?」
気のない返事が返ってきたので横目で見遣ると、旦那はクリスマスケーキが並ぶショーケースに目を奪われていた。まあ聞いてはいるらしいので、構わず話を続けようか。
「…24日か25日、どっちか空けといて下せェ」
俺も旦那から視線を外し、さして興味もないケーキ達を眺めながら言った。平静を装っているが、実はちょっとドキドキしている。
断られたりしたら、本気で落ち込むぜィ。

「…どっちかじゃなきゃいけねぇの?」
質問の意図が分からず旦那の方に視線を戻すと、バチリと目が合った。
「どういう意味でさァ」
「両方空けとくよ、沖田くんのために」
旦那は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、またケーキに視線を戻してしまった。多分、彼なりの照れ隠しだろう。
「泊まっていいって事ですか?」
顔がにやけるのも気にせず問えば、旦那は今度は天を仰いだ。
「定春もいるけど、それでもいいならな」
「チャイナは?」
定春っていうと、あのでっけぇ犬か。そりゃあ別に居ても気にしないが、犬の他にも住み着いてる奴がいたはずだ。
「志村家に泊まるんだとよ」
成る程、眼鏡のとこか。
…旦那が手を回したんだろうか。そうでないと話がうますぎるもんな。全く、この人も可愛い事をするもんだ。
他人の事を気が早いだなんて言えないじゃないか。

弾んだ街のムードも悪くない。年甲斐もなく、クリスマスが待ち遠しくなってきた。












ソリの準備はもう出来た

















2009.12.9


あきゅろす。
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