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(『for you』の続き)



白い包帯を巻かれたラビ。その姿を見ると、ズキンと胸が痛んだ。
「ねぇ、ラビ」
「ん?」
「もう絶対、あんな事しないで下さいね」
真正面から目を見て言ったが、ラビは答えは返さず、苦笑いだけを浮かべた。それは即ち、約束出来ないという事だろうか。
「はぐらかさないで、」
「うーん、だってさ、いくら約束したって咄嗟に体が動いちゃうんさ。今はそのつもりでも、ああいう場面になったらきっとまた同じ事すると思う」
そう言って困ったように笑った。

「ラビがAKUMAの攻撃をもろに喰らった時、頭が真っ白になりました」
血液が冷たくなって、内側から凍り付いていくような感覚。周囲の音は全く耳に入らないのに、自分の鼓動だけはやけに煩かった。
嫌な汗が全身から吹き出した。焦点が定まらない視界の中、ラビに向かうAKUMAを確認して無意識に近い状態でそれを破壊した。
見慣れた筈の赤い液体。しかし目を逸らしたくなった。それが彼の体から溢れ出る物だと信じたくなかった。
「もう、あんな心臓を締め付けられたみたいな感覚、味わいたくない。…これ以上、大切な人を失いたくないんです」
瞼の裏に映ったのは、義父の姿。
そっと、大きな手が僕の頭に乗せられた。
「アレン…ごめんな」
眉尻を下げたラビの顔を見てはっとする。
ああ、違う。僕はラビにこんな悲しそうな顔をさせたかったんじゃないんだ。
「謝らないで下さい…。ごめんなさい、ほんとは僕が謝らなきゃいけないのに」
「なんでアレンが謝るんさ」
「ラビが怪我をしたのは僕のせいだ。ごめんなさい」
そもそも僕がしっかりしていればラビが僕を庇う事も、そのせいで怪我をする事もなかったんだ。なのにラビを責めるなんて、お門違いもいいところだ。
「俺が勝手に庇って勝手に怪我したんさ、アレンは何も悪くない。それに、謝罪なんて望んでない」
嗚呼もう、優し過ぎる。
頭に乗せられた大きな手も、遠回しに催促するその言葉さえも。

「ありがとう、助けてくれて」
漸く頭から手が離れて、ラビはうん、と笑ってくれた。
「大体アレンだってさぁ、目の前で人が傷付いてたら見境なく庇いに飛び込むじゃん。あれ、見てる方はヒヤヒヤするんさ」
う。言葉に詰まる。
心当たりがありすぎる。でも、咄嗟に体が動いちゃうんだ、ってこれ、ラビが言ってたのと全く同じか。
「…今度から気をつけます」
よろしい、とラビは真面目くさって頷いた後破顔した。つられて僕も笑う。
こうして君と、ずっと隣で笑っていられればいいと思う。
君と一緒ならば、何より幸せ。










with you













2009.11.6



あきゅろす。
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