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パタパタと窓を叩く雨の音が絶え間無く続く。
――確かあの日もこんな雨降りだった。




朝から降り続く雨。何をするのも煩わしく、ただぼうっと頬杖を付いて窓から外を見下ろしていた。後ろで神楽と新八がテレビを見ているらしく、時折笑い声が聞こえていた。
眼下の道は雨の為に人影が疎らだ。水溜まりが幾つもあり、引っ切り無しに波紋が出来ている。

幾人目かが通り過ぎるのを見送りふと目線を戻すと、窓の調度真下に一つ、目に鮮やかな赤い傘がそこにあった。
客かと思ったが、しかしその傘は動く気配がない。道に何か落とし物でもあったのかと思ったが、そうでもないらしい。

暫く見つめていると、ふと突然その傘が動いた。
傘に隠れて見えなかったその人の姿が徐々に露になる。先ず、足が見え、次に派手な着物。そして黒い髪。
そこまで見えた所ではっとした。
いやいや、まさか。自分の頭に浮かんだ考えを打ち払おうとするが、しかし目に映る光景を否定出来る訳もなく。無意識の内に頬杖を外し、食い入る様にその人を見つめた。

ゆっくりと、焦らすようにその人が顔を上げる。
嗚呼、やっぱり。
「高杉…。」
自分にだけ聞こえる程度の音量で、呟く様にその名を口にする。
彼の口元には笑みが浮かんでいる。そして、惹き付けられる様に、妖しく光る瞳に視線を捕われた。
射ぬかれるかの如く見つめられ、目を離せない。一時間だったかもしれない、或いは一分、或いは十秒程だったかもしれない、呼吸すら忘れてただひたすらにその姿を見つめていた。
ふとその瞳が緩み、先程までの口元だけの笑みとは違う優しい笑みを作った。一瞬、驚いて目を見開く。
その時、視界の端に青い傘を差した人影が一つ現れた。こちらに歩いて来ているらしい。
慌てて彼に目を戻すと、既にそこに彼の姿はない。道を見渡しても見当たらない。
思わず身を乗り出し、窓に張り付いて探す。後ろで新八が不審がって呼び掛けているらしいが、そんな事には構っていられない。
道の端から端までくまなく探すがやはり見付からない。
「銀さん?どうしたんですか?」
問い掛ける新八を余所に、しばしほうける様に窓の外を眺め続けた。






あれから一週間近く経ったが、今日、あの日以来初めて雨が降った。
俺はまた窓の外を眺めている。
何を期待しているんだか。自分に失笑を漏らす。
しかし、赤い傘が目に入る度にどくり、高鳴る鼓動。首を振って抑えるが、目は窓の外から離せない。

そして、幾つ目かの傘が通り過ぎた時、道の端にあの鮮やかな傘が現れた。
彼がまた立ち止まり、こちらを見上げた時には俺は窓をがらりと開け、身を乗り出していた。
なりふり構わず、彼が差し出した腕目指して飛び降りた。














雨宿りに出掛けよう

















2009.3.23


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