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扉を開けると、そこには花束を背負った沖田くんがいた。

「え、何これ」
「…とりあえず、上がっていいですか」
どうとっていいか分からない、無表情の彼。言われた通り部屋に上げてやるけれど、彼が肩に無造作に乗っけている花束が気になって仕方ない。
そりゃあ沖田くんは顔は整ってるし、見た目的には花を背負ってても似合う。絵になる。でも、キャラ的には違和感満載だ。絶対花とか愛でるタイプじゃない。
ていうか、何あれ。でかくね?有名店のチェーン店開店祝いに店先に飾ってあるやつみたいだ。え?よくわからない?じゃあアレだ。スルーしてくれていいです。
とにかくデケェんだよ。うちの狭い廊下の壁に掠ってるもん。あーあ、花びらも花粉もぽろぽろ落ちてるよ。後で新八に掃除させよう。あ、今日は来ないんだっけか?じゃあまあ、明日でもいいか。え?俺が掃除しろって?いやいやそんな、面倒くさい。
そうこうしてる内に居間に到着した。沖田くんを振り返ると、やはり無表情なままで、やはり無造作に俺に花束を寄越した。
「…で?何、これ」
「花束でさァ」
「…イヤ、それは見たら分かるけど。そうじゃなくて」
とりあえず受け取った花束を手に、脳内を疑問符でいっぱいにする俺を通り越し、沖田くんはソファに腰を下ろす。

「局長が、昨日無理矢理『恋人へのプレゼントはでっかい花束に限る!』とか言って押し付けて来たんでィ。俺の柄じゃあねぇってのにあのゴリラ、人の話を聞きやしねぇ」
当たり前のように吐かれる上司への暴言は、この際無視しよう。プレゼント、という単語に引っ掛かりを覚えて思考を巡らせてみれば、ああ、今日は俺の誕生日か。それで神楽達も気使って出掛けてったのか。
しかし、その上司の助言通り柄にもない花束を引っ提げて、わざわざ俺に会いに来てくれたのか。それを考えると、愛しさが込み上げてきた。
「ありがとう」
「…どういたしまして」

後で花瓶を引っ張り出して飾っておこう。探せば花瓶くらいあるだろう。コイツを飾れば、この生活感溢れる居間も、いくらか華やかになる事間違いなしだ。
花より団子な俺が、花をプレゼントされてこんなに嬉しく感じるものなのか。いや、勿論手渡してくれた人が沖田くんだから、こんなに嬉しいんだ。花も悪くないかもな。

「――で、旦那。ケーキでも食べに行きますかィ?」
俺の心を読んだように吐き出された沖田くんの言葉に、俺はピタリと動きを止める。
…前言撤回。やっぱり糖分には敵わねぇや。笑みを浮かべて大きく頷き、差し出された彼の手をとった。












花束

















2009.10.10


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