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Tシャツに短パン、お祭りにしては少し味気無い格好な気もするが、夏なのでそれもまた良しとしよう。シゲと将は連れ立って近所の夏祭りに来ていた。
「あ、金魚すくい!」
「おお、いいなぁ。どっちがいっぱい掬えるか勝負しよか」
気さくな感じの屋台のおじさん…いや失礼、オニイサンからポイを受け取ってしゃがみ込む。
「よっしゃー、負けへんで!」
「僕、あんまり自信ないんですけど…」
苦笑いする将をよそに、シゲは早速ポイを水に浸けたかと思うと、次の瞬間には一匹救い上げ、僅かに水の入った自らの器に入れてしまっていた。それを見て目を丸くしながらも、将も水面に向かう。

「シゲさん、凄いですね」
シゲが持つ袋の中には5匹の金魚が窮屈そうに泳ぐ。何匹救っても持って帰れるのは5匹までとの事だったのだが、実際はその倍を越す数の金魚を掬い上げていた。
因みに将の袋の中には3匹の金魚が泳いでいる。
「まあな」
悪戯っぽくニヤリと笑う。その笑顔には、照れ隠しの意味も含まれている事を何となく気付いていた将は、ただにこりと笑い返す。
その時、不意に夜空に花が咲いた。
周囲から歓声が上がり、二人も見上げてみれば大輪の花火が後から後から打ち上げられる。突然の大きな音に驚いたらしい金魚達が、パシャパシャと跳ね回り波を立てる。
「わー、綺麗…」
きらきらと瞳を輝かせて花火を見つめる将はあまりにも綺麗で、
「カザ、」
「はい?……んっ!?」
シゲは触れるだけのキスを落とすと、唇を押さえたまま真っ赤になっている将に背を向け、何事もなかったかのように歩き出す。
「シゲさんっ、」
「花火、よぉ見えるとこ行こっか」
それだけ言ってまた歩き出すシゲの後を、赤い顔のまま慌てて追う。
金魚がポシャリ、また跳ねた。










金魚よりも、花火よりも、













第三期拍手御礼文
2009.7.18〜9.19



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