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「アレン、どっから回るさ?」
日が落ちはじめ、辺りに吊された提灯が足元を照らす。何時もならば人気が失せ始めるこの時間、しかし今日ばかりは人が溢れ活気に満ちていた。
何時もは寂れた商店街。しかし今日はお祭りだ。駅前という事も手伝って比較的遠方からも人が集まり、年に一度の賑わいを見せている。
浴衣を着込んだラビとアレンは、商店街の入口付近に立ち辺りを見回す。
「たこやきと、わたあめ!あと焼きそばとりんご飴とフランクフルトとカステラと…」
「食べ物ばっかりかよ」
苦笑いをするラビをよそに、アレンはあちこちに目を走らせ食べ物の出店を見付けては目を輝かせる。
「まあとりあえず、一周回ってみようか」
「はい」
言うが早いか、アレンは一番手前にあった焼きそばの出店に一直線。腕まくりまでしている。
その後を追ってラビがゆっくり歩き出すと、もう買い終えたらしい焼きそばを片手に振り返った。
「ラビ、速く速く!」
急かすように手を振るアレンはそれは楽しそうな笑顔を浮かべていて、その姿は子供のようで(実際まだまだ子供と呼べる年齢なのだが)ラビも気付けば笑みを零していた。

「そんなに急がなくてもお祭りは逃げないさぁ」
「何流暢な事言ってるんですか。いっぱい回らなきゃいけないのに」
ちゃっかり焼きそばをラビに持たせてその着物の袖を引く。ラビはその白い手をそっと布から剥がし、自信の手を絡めた。しかも所謂恋人繋ぎだ。
「ラビ、」
焦ったようにラビの顔を見上げるアレンに、ラビは何も言わずににっこり笑ってみせた。
「っ、早く、回りましょう」
火照った顔を隠すように、ラビに背を向け歩き出すアレン。しかし耳までは隠しきれなくて、白い髪から覗くそれが赤く色付いているのを見てラビはまた、微かに笑んだ。










重ねた手













第三期拍手御礼文
2009.7.18〜9.19



あきゅろす。
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