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暑い暑い夏も終わりに近付き、日差しも幾分弱くなった。まだまだ残暑は厳しいが、真夏の暑さに比べればそれほどの物ではない。尤も此処、屋上で日なたに出るのはまだ無茶だが。
屋上への出入口の影になっている所に、俺はカザと二人で腰を下ろしていた。時折涼しい風が俺達の頬を撫で髪を揺らして通り過ぎて行く。
隣に目を向ければ、カザはただぼうっと空を見ていた。俺も何となしに視線を上に上げると、途切れる事なく何処までも青が続いていた。都会の空気は汚れている、なんてよく聞くが、そんな事を感じさせない程澄んでいるように、俺の目には映った。


暫くして再びカザに視線を戻すと、随分瞼が重そうだ。
「眠いんか?」
「少し」
目を擦りながら頷くカザ。少しじゃないやろ、内心ツッコミを入れながら、カザの頭に手を回す。そしてゆっくり、そうっと俺の肩にもたせ掛けた。
「予鈴鳴ったら起こしたるわ」
「ありがとう、ございます…」
言うが早いか、カザは寝息をたてだした。
ほんまに、これの何処が少しやねん。呆れ混じりに少し笑って、小さな頭をゆるゆると撫でる。柔らかい髪が心地良くて、暫くそうし続けていた。
試合になれば何かしてくれるんじゃないか、と大きな期待を抱かせるこの子。
しかし、今自分に体重を預けて眠るこの子は、まだまだ幼くて小さくて。預けられた体重も苦にならない程の重さだというのに、試合の時のあのパワーは一体どこから出て来るのやら。
とにかく、昼休みはあと15分程残っている筈だ。どうせ今日の放課後も、そしてきっとその後もカザは目一杯走り回るのだろう。ならばせめて今の間くらいゆっくり休ませてやろう。


また、風が吹き抜けて行く。その風を感じるように目を閉じてみると、俺まで目を開けるのが億劫になって来た。
予鈴が鳴るまで起きていられるだろうか。カザに起こすと言ってしまった手前、ここで自分が眠ってしまう訳にはいかないのだが。
そう思いながら瞼をこじ開け、カザに目を向ける。
その寝顔は年相応、いやむしろそれより幼く見える程で可愛い。睫毛、長いなぁ。頬っぺたも柔らかそう。
そんな事を考えていると、風に煽られあらわになったおでこに思わず口づけを一つ落としていた。するとカザの表情が少し柔らかくなった気がして、頬を緩めた。15分くらい、カザの寝顔を見つめていれば案外あっという間かもしれない。それ以上見つめ続けても飽きる気はしない。
嗚呼なんて穏やかな午後だろう。
願わくば、この平穏な時間がもう少し続かん事を。










夏の終わりの昼下がり













2009.9.8



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