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突然に腕を引かれ、それに従って後ろに体重が傾く。背後のソファーに重力に逆らわずにポスリと座ると、優しい香りが背後から僕を包んだ。
視界の隅に、金色を捉える。さらさらと流れるように揺れるそれは、とても綺麗だ。

「シゲさん?」
どうしたんですか、と言う意味を含ませて彼を呼んだ。けど、それに対する返答はなく、代わりに頭に顎を乗せられた。体制が変わって先程より体重が掛けられる。
「シゲさん、重いです」
「男やったらこのくらい我慢や」
「またそんな事言って…」
呆れた顔を作って笑ってみせる。
頭に体重掛けられて、身長伸びなかったらシゲさんのせいだ。そう言うと一瞬頭の上の圧力がなくなって、代わりにポンポンと頭を軽く叩くように撫でられた。


「なぁ、カザ」
耳元で紡がれる、優しい声。静かに空気に溶け出すように響くその声は、少し擽ったいけれど心地良い。
「なんですか?」
「カザは、もしかしてスキンシップ苦手やったりする?」
「…へ?」
予想外の質問に、思わず間の抜けた声が出た。
「抵抗はせんけど、自分からスキンシップとかあんませんやん?」
確かに自分からシゲさんに抱き着いたり、なんて事はないに等しいけど、そんな風に思ってたなんて。最近少し、抱き着くまでに間があったりしたのはそのせいか。
「確かに自分からスキンシップするのは苦手です。けど、」
「(やっぱり苦手なんや)…うん」
「でも、シゲさんに抱きしめられたりするのは、好きです」
シゲさんが、ぴくりと肩を動かしたのを感じた。

「…ほんまに?」
「本当ですよ。初めは慣れなくてちょっと恥ずかしかったけど、シゲさんに抱きしめられると何だか安心するんです。あったかくなるんです。」
自分がスキンシップをするのが苦手な分、されると嬉しい。ちょっと図々しいかもしれないけど、自意識過剰なのかもしれないけど、愛されてる って思えるんだ。
「慣れてなくて一々真っ赤になってたカザも可愛かったけどな」
「今となっては、あんなにあたふたしてた事の方が恥ずかしいですよ…」
あの頃は本当、毎回耳まで真っ赤になってどうしていいかわからなくて、シゲさんの腕の中でおどおどしていた。
ああ。そういえばあの頃は抱きしめられるとちょっと抵抗したりしてたな。あれは恥ずかしさから来る物だったんだけど、シゲさんがそう思った原因の一つだったりするのかな。


「…だいたい、好きな人に抱きしめられて、嫌な訳ないじゃないですか。」
ぼそりと言うと、予想以上に恥ずかしくなって顔が赤くなるのを感じた。
腰に回ったシゲさんの腕の力が、少し強くなった気がした。










好きなんだから!













2009.8.17



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