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辺りはすっかり闇に呑まれ、僅かな月明かりのみが視界を作る。人間と呼べる物は、そこには二人しか存在していなかった。
耳障りな声と破壊音が絶え間無く鳴り響き、静寂を乱す。二人が対峙するのは、大量の殺人兵器。
生憎の視界の悪さだったが、二人はそれをものともせず走る。一方は明るい橙の髪を揺らし、一方は月明かりに映える白い髪を風に靡かせて。

襲い掛かって来る兵器はとめどなく、二人は実力では勝っているものの、大なり小なり傷を負っていた。体を動かす度に、何処かがズキリと痛む。
「はぁっ…キリないさ」
「ラビ、ぼやく暇があったら手を動かしてください」
ラビと呼ばれた青年は、言われた通り一体の兵器を破壊し再び口を開く。
「アレン、厳しいさー」
はいはい、とアレンと呼ばれた少年は軽く受け流し、自らも破壊の手を進める。

アレンは少々急いでいたのだ。闇が広がる度に、時間が迫る。日付が変わってしまう。明日になるまでには、何としてもこの状況から脱出したかった。
間髪入れずにアレンの手から爆発音が生み出される。早く、早く。


そして音が止んだ。
ラビはドサリと地面に倒れ込んだ。手足を大きく広げて寝転がるラビに、アレンは呆れながら笑いを漏らす。

「あ、」
「ん?」
ふと時計に目をやったアレンが声を上げた。ラビは頭だけ持ち上げてアレンを見上げる。
「(日付、変わっちゃった)」
時計は12時を5分程行きすぎた所を指していた。
せっかく急いだのに、結局間に合わなかった。おまけに服はボロボロだし、あちこち怪我をしている。全く、今日を迎えるには不釣り合いな格好だ。

それでも、何だかこっちの方が僕等には似合っているのかもしれない、そう思うとアレンは自然と頬を緩めていた。
「ラビ、誕生日おめでとうございます」
ラビはきょとんと一拍置いた。そして、ああ、と頷くと緩やかに笑みを浮かべた。
「ありがとう」

せっかくの誕生日、年に一度だけの記念日。それなのに、その特別な日をこんな血生臭い場所で向かえようとは。全く酷い誕生日だ。
でも、何故だろう、それほど酷いと感じていないのは。これもこれで、自分達らしいと笑ってしまえるのは。

なんて。理由は考えずとも分かっている。
本当は場所も、服装も、そんな物どうだっていいのだ。何も必要ないんだ。
ただ、君がいてくれればそれだけで、










君とならばそこは













2009.8.10



あきゅろす。
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