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(バトロワ的な←&死ネタ)



カサリ、茂みが動き緊張を高める。誰だ?
支給武器の刀にそっと手を掛ける。再び刀を手に取るのがこんな形でだとは思わなかった。全く、皮肉なものだ。
すると目の前に、小石がバラバラと降って来た。
成る程これで前方の安全確認をしている訳だ。そこまで頭が回るって事は、敵にしたら厄介な相手に違いない。
しかし同時に一人の少年の顔を思い浮かべる。彼の可能性もあるのだ、俺が探している彼の。
臨戦体勢は崩さず、じっと待つ。相手との我慢比べだ。相手が出て来るまで、絶対に動いてはいけない。相手の顔を見た瞬間に動くのだ。

ガサリ

動いた。
瞬間、刀を抜く。
「!!」
相手も刀を抜くのを視界の端で捉え――そこで刀を抜く手を止めた。
「沖田、くん」
「旦那……」
お互いに、確かめるように名を呼ぶ。嗚呼、本当に彼なのだ。


「脱出する方法、思い付きやした?」
再会の喜びを言葉にする事もなく、彼が切り出す。そんな事言い合うだけ時間の無駄だと解っているのだ。だから俺も、彼に何も言わない。
そんな事、言葉にするまでもないのだ。再会して、お互い顔を見合わせて、こんな状況下なのに少しだけ笑い合った。それで十分だ。感動の再会シーンだったのだ。
「おいおい、俺に丸投げか?」
「俺、頭は悪いんでねィ。言われた事は実行出来やすが」
「俺だって頭いい覚えはねぇよ」
軽く笑いながら言うと、彼も少し表情を崩した。


「今んとこはお手上げだな。コイツをどうにか出来ない限り、何したって一緒だ」
首に重苦しく巻き付く、銀の首輪に触れる。温かみのないそれは、絶望を与えるに相応しい。これが爆発すればゲームオーバー。あっという間にこの世とおさらばだ。
「厄介ですねィ」
彼がぼうっと俺の首輪を見つめながら言った。




あれから何時間経っただろう、もう時間の感覚も薄れてしまった。結局脱出の方法は見付からず、かつての仲間達は最期に再会する事も出来ないまま、次々に死んでいった。放送で淡々と告げられる死は現実味がなく、しかしそれでいて重く心にのしかかった。
ゲームが始まってから、何人かこの手で斬った。刀の重さが、手に伝わる肉を裂く感触が、少し懐かしくて吐き気がした。
そして気付けば、生き残っているのは俺と沖田くんの二人だけになっていた。この、血に塗れた場所に二人きり。
あと一人、どちらかが死ねばこのゲームは終了だ。生き残った方が勝ち、ゲームクリア。

「沖田くん、」
「何でィ」
「正直俺さ、脱出の方法なんて始めからちゃんと考える気なかったのかもしれない」
沖田くんの視線が俺の顔に向かうのを感じながら、なお前を向いたまま話続ける。
「沖田くんに会えた時点で、もうそれだけで良かったんだよ」
「…旦那、」
「でも、沖田くんには生き残って欲しかったから、ちょっと予定変更しちまった。本当は、ここまで生き残る予定はなかったんだ」
「旦那っ、」
「俺のエゴだってのは分かってる。多分、生き残った方が辛いって事も。それでも、生きてれば笑えるから。直ぐには無理でも、いつかきっと笑えるから」
「旦那!」
「今度は、ちゃんと幸せになれるやつと恋しろよ。んで、出来れば俺にも報告してくれ。ちょっと妬くかもしれないけど、そればっかりは勘弁してくれよ。最後にはちゃんと祝福してやるから」
「何言ってんでィ!俺がアンタ以外のヤツに惚れるかよ!今度はって何だよ!旦那じゃなきゃ駄目なんだ、なぁ、何とかして脱出しやしょう。俺達が組めば何でも出来まさァ」
嗚呼、予想はしていたけれど、彼のそんなに寂しそうな顔を見るのは辛いな。漸く沖田くんと目を合わせ、ゆっくり首を振った。
「ありがとう、俺なんかを好きになってくれて。これは俺の我が儘だけど、俺の事、皆の事、辛いだろうけど忘れないで。」
何だか刀は使いたくないな。かつての仲間の血を吸ったコイツで俺を斬るのは、どうしてだが忍ばれた。
ゲーム中手に入れた銃に手を掛け、こめかみに押し当てる。それは冷たく、重かった。
引き金に掛けた指に力を入れながら、沖田くんに出来る限りの笑顔を向けた。

バン

乾いた音が頭の中に響く。視界が急速に狭くなり、黒に蝕まれていく。
「忘れ、ません」
沖田くんがそう言った気がした。
そして完全に黒が支配した。












ブラックアウト

















2009.7.25


あきゅろす。
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