[携帯モード] [URL送信]
 





小刻みに震える肩。
目を離したら消えてしまいそうに頼りない。
コイツは、こんなにも小さかったのだろうか。





暗い暗い部屋の中、明かりは窓から差し込む僅かな月光だけ。ベットの上で膝を抱えてうずくまる。
自らの腕の中で、全てを遮断して目を閉じれば、先程の光景が瞼の裏を過ぎる。
肉が引き裂かれる音、
耳をつんざく悲鳴、
まだ温もりの残る体、
二度と動かない肉塊、

とめどなく溢れる血、


こびりつく夥しいあ か 、


間に合わなかった、
(助けられたはずなのに)
僕に縋るように伸ばされた手、
(その手は呆気なく崩れ落ちた)
僕が、弱いから、
(僕がころした?)

嗚呼、嗚呼、僕は救えなかったんだ。




「チッ」
面倒臭いヤツ。
何でも一人で抱え込んで、独りで傷付いて。その姿を見て思わず舌打ちをした。
「何ですか、人を見て舌打ちするなんて失礼ですね。」
顔を上げずに言う。
コイツも馬鹿じゃない。見ずとも自分に舌打ちされているのが分かっている。
恐らく、その理由も。

その肩は闇に溶けてしまいそうに弱々しい。ゆらゆら揺れる月光のせいで、一層頼りない。
そのくせ俺には強がって。
しかしその声が思いの外か細くて、震えていて、気付けば体が勝手に動いていた。

腕の中に小さく細い体を抱えた膝ごと閉じ込める。
戦場ではあんなに堂々として大きく力強く見えたのに、意図も簡単に腕の中に収まってしまった。
ビクリ、驚いたのか一瞬体が強張った。顔を上げようとするのを左手で押さえ込んで、そのまま白に透ける髪に指を絡める。

「珍しいですね、カンダが優しいなんて。」
明日は大雪かな。
皮肉を言うその言葉さえ震えていて、少しだけ、抱きしめる腕に力を込めた。
あと少し力を入れたら壊れてしまいそうだ。
「うるせェ。」
呟くように言う。
それよりもっと小さな、しかしよく通る声で、
ありがとう、と確かに俺の鼓膜を揺らした。
そして額を俺の胸に押し当て、こちらに体重を預けた。

しかし、握り締めた手は膝を抱えたまま。
声も出さずに、静かにただただ涙を流していた。じんわり、胸の辺りが温かく濡れる。
細い体から伝わる震えがいたたまれない。


声をあげて、我を忘れて、縋るように泣けばいいのに。その方がずっとずっと楽なのに。

それをしないのはコイツの強さ。

それが出来ないのは、コイツの弱さ。












救済


















2009.2.27


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!