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(高校生パロ)
*桜庭と上原がクラスメートで、風祭も同じ高校な設定




今日は誕生日だってのに朝からツイてなかった。
朝食を食べながら気まぐれで見てみた星座占いは12位だった。
登校中は、昨晩の雨が作った水溜まりを避けて歩いていたというのに、騒音と共にやって来たスポーツカーが速度を付けたまま水溜まりを横切り、漫画のように跳ね上がった水をもろに被ってしまった。
教室で鞄を開けると、この湿度の高さなのにタオルを持って来るのを忘れた事に気付いた。しかも先程水を被ったお陰で、濡れたまま授業を受ける嵌めになった。
その他にも小さな不幸が重なった。単体で見れば何ともないのだが、それも積もり積もれば気分も滅入る。

全ての授業が終わると同時に長く重いため息を吐き出すと、俺の隣にやって来ていた淳が呆れと心配が入り混じったような表情で俺を見遣る。
「サク、無事?」
「あんまり無事じゃない…」
淳は眉を寄せ、困ったという表情を作る。
「…とにかく部活行こう。サッカーしたら気分も晴れるかもしれないし」
そうだな、と重い腰を上げ鞄を担ぎ教室を後にした。


グラウンドも例に漏れず湿度が高い。じめじめとした空気がのしかかって来る。
「あっちー」
何もせずとも汗が滲み出る。この纏わり付くような空気はどうにかならないものか。
「あ、桜庭くん、上原くん」
そんな中鼓膜を震わせたのは、どうにも愛しいあいつの声。
「よう、風祭」
風祭の屈託のない笑顔に、落ち込んだ気分が少し薄れる。

「桜庭くん、」
風祭はアップの為に走り出そうとしていた足を止め、身長差の為に半ば上目使いで俺に視線を合わせる。
先程まで欝陶しいと思っていた湿った空気も、今は知覚の外だ。真っ直ぐな光を宿した黒い瞳に、俺の意識の全てが集まる。

「誕生日おめでとう」

ドキドキと心臓がいつもよりペースアップして脈打つ。
先程より輝きを増した笑顔は、見惚れる程に綺麗で。何とか返したありがとうという五つの音は、ともすれば風に紛れて消えてしまいそうだった。
「じゃあ、先に走って来るね」
言い残して地面を蹴る風祭の背中を、立ち尽くしてぼうっと見つめた。
「…サク?」
機能停止した俺を淳が覗き込む。目の前でひらひらと振られる手を、ぱしりと掴んで止める。

「今日人生で一番幸せな日かも…!」
「…サク、単純だな…、ってか幸せのレベル低くね?」
淳が呆れ顔で呟いたけれど、そんなの俺の耳には入らない。先程までのアンラッキーが全てチャラになるどころか、お釣りが来たのだ。それも抱え切れない程に。
これを幸せと呼ばずして何と呼ぼう!










ハピネス













2009.6.30



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