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「邪魔しているぞ、銀時」
坂田銀時が台所から戻ると、茶の間のソファーには見知った顔があった。しかし家に招き入れた覚えはない。所謂不法侵入だ。
「何勝手に居座ってんだよテメー。どっから入って来やがった」
玄関は鍵を閉めておいた筈だ、と記憶を辿る。
銀時の記憶は正しかった。では不法侵入者、もとい桂小太郎は何処から室内に侵入したのか。
桂はすっと腕を上げると一方を指差した。そちらに目を向けようとする銀時の髪を風が揺らす。
「――窓からだ」
真っ直ぐに伸ばされた人差し指の先には、開け放たれた窓。
悪びれた様子もなく堂々と言う桂に、突っ込むのも面倒に感じられた銀時は、とりあえず強烈なアッパーカットをお見舞いしておいた。それは見事に決まり、桂は『ぐはっ』と言って倒れた。
ふぅ、と息を吐きソファーにどさりと腰掛ける。

「ところで銀時」
「いつの間に復活したんだテメー」
桂は何事もなかったかのように銀時の隣に腰を下ろしていた。銀時の発言は無視して、桂は更に言葉を続ける。
「今日が何の日か知っているか?」
「…結構図々しいよな、お前」
勿論知っている、ちゃんと覚えている。…桂の誕生日だ。
「先程から甘い匂いがしているが、…俺へのプレゼントで合ってるか?」
何を隠そう、桂がやって来た時銀時が台所にいたのは、桂のバースデーケーキを焼いていたからだ。その甘い香りが、台所から漂ってきていた。

銀時は無言のまま立ち上がり、台所に向かった。暫くして戻って来た彼の手には、皿に乗せられたケーキがあった。生クリームで覆われたそれは見事な出来栄えで、市販のそれと見紛う程だ。無造作に卓上に置かれたそれからは、先程から室内に微かに漂っていた甘い香りが放たれている。

「半分は俺が食べるからな」
言うが早いか、銀時はケーキにナイフを入れ始めた。言葉通りきっちり等分に。
全くちゃっかりしている。しかし普段の銀時ならば、半分と言わず9割ぐらい持って行ってしまう所だ。彼なりの祝い方なのだろう、そう思うと自然に頬が緩み、桂は微笑みながら頷いた。
「…おめでとう」
ぼそりと呟くように発せられた言葉は、しっかりと桂の耳に届いた。
「ありがとう」
照れ隠しなのか銀時の視線は桂から外され、ケーキ一点に降り注がれた。桂はまた、僅かに笑みを零した。













赤い甘い苺を乗せて

















2009.6.26


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