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談話室で寛いでいると、いつになくご機嫌な様子でラビがやって来た。何かいい事でもあったのだろうか。ラビがこちらに向かってにこにこと笑うから、よく分からないまま僕も半ばつられる様に笑い返した。
そのまま距離を詰めたラビは、僕の隣に腰を下ろした。そして目の前の机に、ラビはバサリと音を立てながら一冊の雑誌を広げて置いた。

それに目を向けてみれば、そこには沢山の写真がちりばめられている。その中でこちらに向かって笑む女性達は、皆華やかなドレスを着てポーズをとっている。そして見出しには、ジューンブライド特集の文字。
ああ、確か六月の花嫁は幸せになれる、だったっけ。朧げな記憶を呼び起こす。
しかしそんな物をこんなに機嫌良さそうに僕に見せて、どういうつもりだろう。…全く見当が付かないわけじゃない。むしろ嫌な予感はぷんぷんしている。敢えてそれには目をつむり、ラビの言葉を待つ事にした。

「これ、絶対アレンに似合うと思うんさ!」
意気揚々と、声を弾ませて言うラビの指を辿ると、純白のドレスを身に纏った女性と目が合った。ええと、このウェディングドレスが僕に似合うという事だろうか。…ああ、嫌な予感的中だ。全く、何を言い出すんだかこのバカ兎は。
「僕に女装しろって言うんですか」
「だってアレン可愛いからさ、似合うって!」
デレデレと顔を緩ませるラビの頭に、げんこつをお見舞いしてやった。痛いさぁ、とか言ってうずくまっているが、そんなの自業自得だ。むしろ、右手だっただけ優しいでしょう?
認めたくないけれど女顔なのを気にしているというのに、可愛いだとかドレスが似合いそうだとか言われても嬉しいわけがない。全くそうは見えないのに頭はいいのだ、なのに馬鹿なんだ。
はぁ、呆れたように溜め息を吐き出す。

「アレンー」
「なんですか」
いつの間に復活したのやら、早い事だ。ずり落ちた椅子に顔だけ乗せてこちらを見ている。

「結婚するなら、6月にしような」

相変わらずへらへらと笑うラビの顔を凝視する。
そしてその言葉の意味を唐突に理解した途端、頬が、耳が、熱を持つのを感じた。それって、つまり…。
赤みを帯びた顔を隠すように、思わず口元を手で覆いラビから目を逸らす。
「…ほんと、馬鹿なんじゃないですか」
精一杯の憎まれ口は、それと分からない程小さな音になって口外に出た。

ちょっとだけ…、ほんのちょっとだけ嬉しかった、なんて口が裂けたって言ってやるもんか。










Will you marry me?













2009.6.20



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