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苦しい。苦しくて、苦しくて、泣きそうになる。誰かに助けてほしいけれど、同時に誰にも助ける事なんて出来ない事も理解している。
これは、俺の問題なのだ。俺が諦めて忘れるしか、それしかないんだ。

「銀時」
「なんだよ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ!」
こんな日常的なやり取りでさえ、苦しい。
いっそ、もっと遠い存在だったら良かった。言葉も交わした事のないような、遠くから見ているだけのような存在だったら。
まあ尤も、そんな存在だったら俺が彼にこんな気持ちを抱く事もなかっただろうが。
しかし仮にそうしたら、遠慮なくこの想いを打ち明けられたかもしれない。少なくとも、失う不安はない。
でも、それはもう叶わぬ事だ。

目の前で揺れる漆黒の艶やかな髪に見惚れる。そう、彼はこんなにも、近い。
自惚れではなく、彼は俺を頼ってくれていると思う。俺を仲間だと思ってくれていると思う。
だからこそ、苦しいのだ。
もし俺が想いを伝えて、それを彼が受け入れてくれなかったら?
元通りの関係なんて、表面上だけならともかくとても無理だろう。
だとすれば彼は、少なくとも大切な友人を一人欠く事になるだろう。俺も、もう彼と離れるのは辛くなってしまった。
ほら。伝えても、良いことなんて何一つないだろう?

だから、この想いは一生閉じ込めておこうと、そう誓ったのに。
彼が俺の名を呼ぶ度、俺に笑顔を向ける度、何度も溢れそうになって。気付かぬふりをしようにも、無視出来ない程に大きくなって。
いつから俺は、こんなに女々しくなったのだろう。いつからこんなに弱くなったのだろう。

伝えたい。でも、知られたくない。もっと近付きたい。でも、これ以上側に行くのが怖い。
矛盾だらけで笑えてくる。


「好きだ…、」
天井に向かって吐いた言葉は、虚しく消えた。
この言葉のように、この想いも溶けて消えてくれればいいのに。


「銀時」
今日も彼は俺の名を呼ぶ。
その声が心地良いなんて、全くどうにかしてる。

そしてまた俺は、はけ口を見つけられないまま独りぐるぐると回るのだ。









叶わぬ願い













2009.5.30



あきゅろす。
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