「ギャーッ!ななななんですかコレ!」
平穏な昼下がり、黒の教団いっぱいに響いた叫び声。それは愛しいあの子のもので、俺は慌てて駆け出した。
後ろでジジイが何か言っているけれど、そんなの無視だ、無視!
確か科学班フロアの辺りから聞こえたよな。記憶を頼りに走る。
バンっ、扉を強引に開き勢いよく室内に足を踏み入れた。
「アレン!どうしたんさ!?」
そこで見たものは――
「あ、ラビ…」
「、えっ…!?」
柔らかそうなふわふわの耳、ズボンから窮屈そうに伸び出るスラリとした尻尾。
「ねっ、猫耳ー!?」
――
「…つまり、また科学班のあやしい薬のせいって事か。」
「はい…。」
要約するとこうだ。
任務の入っていなかったアレンが科学班の手伝いで薬品の整理をしていた。
で、薬品を腕いっぱいに抱えてふらふらと歩いていたら、前方にいたジョニーに気付かずそのままぶつかって、薬品の入ったビンの一つの蓋が外れ、見事にアレンの頭に降り懸かった、と。
「もう絶対科学班の片付けは手伝わない…!」
うなだれながら言うアレン。すると、二つの猫耳もペタリと倒れ、尻尾も力無くふにゃりと揺れた。
ちょっ…、これかなり可愛くねぇ?
隣で謝るジョニーは全く目に入らない。
え?酷いって?
仕方ないだろ、あんなアレンから目が離せる訳ないじゃないか。
いやでもアレンは落ち込んでるんだし不謹慎だ!
…でも、
「やっぱりカワイイさぁ、アレンー!!」
「ぅぎゃっ!?」
耐え切れずに衝動に任せて抱き着いた。驚いたせいか、先程まで垂れていた耳と尻尾がピンと毛を逆立てて立った。その姿を見て、一層腕の力を強くする。
「な、何するんですかラビ!吃驚するじゃないですか!」
アレンの文句も耳に届かない。俺の視線はピン、と立ったふわふわの耳に釘付けだ。
「ラビ?聞いてるんですか?」
ふにっ
「う、あっ!?」
思わず触れたその耳は、予想以上に温かかく、予想通り柔らかかった。
「ちょ、ラビ!」
「アレン可愛すぎるさぁ」
尚も耳を触り続けながら言う。アレンは俺の腕の中で顔を真っ赤にしながらも、反抗しようとはしない。
「〜っ!二人共!俺の事忘れてない!?」
あ、ジョニー、ごめん忘れてた。
「いちゃつくんなら他所でやってくんない!」
「いちゃ…!?も、元はと言えば、科学班が変な薬作るから…!」
アレンの言葉を遮って、ジョニーは俺達を外へ追い出した。扉を閉める前に、一晩寝れば治るから、他所でいちゃつけ、と言い残して。
俺達は呆然と顔を見合わせた。さて、どうしようか。
「アレン、とりあえずフード被って。
…それから、俺の部屋いこっか。」
小さく小さく頷いたアレンと連れ立って歩き出す。
今はちょっぴり科学班に感謝、さぁ。
アンラッキーorラッキー
第一期拍手御礼文
2009.3.1〜5.22
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