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「そういえば、明日風祭の誕生日らしいぜ。」
和気藹々と話していた郭、若菜、真田の三人。しかし、真田が発した一言によってその会話がプツリと途切れた。
突然口を閉ざした二人に、真田は冷や汗を流す。あれ?俺、何かまずい事言ったっけ。

「英士…?結人…?」
恐る恐る呼び掛ける真田。二人の顔には影が掛かっていて、表情が読み取れない。
「明日…?」
ぽつり、郭が呟くように言う。真田は戸惑いながらも頷いた。それをきっかけにしたように、二人が口を開く。
「なんでもっと早く言わねーんだよ!」
「自分だけ抜け駆けする気だったの?」

「はああ!?」
突然詰め寄った二人に、真田は若干引け腰になる。
何を隠そう、三人は風祭に想いを寄せているのだ。三人ともお互いがライバルだというのは承知していた。尤も、ライバルは他にも多々いるのだが。
とにかく、そういう経緯があって先程の発言に辿り着いたのだ。

「違ぇーよ!さっき藤代が言ってたんだ!」
「ふーん?」
弁解してもなお、疑いの目を向けられる。普段はとても仲が良い三人なのだが、風祭が絡むと途端にその仲に不協和音が生じるのだ。
真田にしてみれば、親切で教えてやったのだ。二人もきっと祝ってやりたいだろうから、と。
そもそも抜け駆けするもなにも、自分だってたった今手に入れたばかりの情報なのだから、当然プレゼントも何も用意なんて出来ていない。
「まあ、今は一馬に構ってるより、プレゼントを考える方が優先かな」
「そうだな」
中々酷い言い草だ。真田はやはり報われない。
しかし、二人とも見事な切り替えの早さで、とりあえず不和は過ぎ去った。というよりは、意識が他に向いただけなのだが。

やると決めれば二人の行動は早い。さっさと真田に背を向けて歩き出していた。
「お、おい、二人とも…?」
真田の呼び掛けには振り向きもしない。二人それぞれ別の方向へ足を進めている。
「今からプレゼント買いに行くから、ついて来るんじゃねーぞ!」
誰がついて行くかよ。
無言ではあるが、郭もおそらくそのつもりなのだろう。真田の胸に何となく唐突に、この二人と友達を続けていてもいいのだろうか、という思いが過ぎった。

「俺も何か買いに行こうかな…」
誰に言うでもなく呟いて、真田も歩き出した。










決別














2009.5.9


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