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取り留めのない、例えば今日はいい天気だとか最近こんなニュースがあっただとか、そんな平凡な会話を沖田君としていた。今日は街でばったり会ったので珍しく他の面子はいない。彼と一緒なのにこんなに穏やかなのは珍しい気がする。

「…あっ、そうだ旦那。付き合ってくれませんか?」
ふっと思い出したように唐突に、それまでの流れと同様に軽い調子で紡がれた言葉。しかし、意味を理解するには不十分で、首を傾げながら聞き返した。
「付き合うって…何処に?」
また上手い事言って面倒事でも押し付ける気だろうか。それなら御免だ。
しかし、返ってきた答えは、俺の予想と全く逸する物だった。


「やだなぁ。違いやすよ、旦那。
"恋人になってくだせぇ"…って意味でさぁ。」
彼の形の良い唇から奏でられる音が空気を震わせ、俺の耳に届く。そんな彼は普段よりなんとなく表情が柔らかい。どこか茶目っ気を含んでいる。
その彼の言葉の意味を理解するのに、俺は数秒を要した。

「はぁぁああ!?」

いやいやいや、意味わかんねーよ!恋人ォ!?俺、男だぜ!?
そもそも告白ってこんな日常会話みたいなノリで軽くするもんだっけか!?今、かるーく言ったよこの子ぉぉおお!!
混乱のお陰で頭がうまく回らない。だいたい、元からいい出来の頭ではないのだけど。
あー…えーっと、恋人って事はつまり、沖田君は…、

「好きなんでさぁ、旦那の事が」

俺の思考でも読んだのか。
考えていた事を口に出され、かなり焦る。
彼にからかわれているのか?
…いや、微笑ってこそいるものの、真っ直ぐこちらを見つめる彼の瞳は真剣そのものだ。見惚れるぐらいに澄んだ美しい色をしている。

「まあ、今は無理だとしても、必ず振り向かせまさぁ。
だから、返事はいつになってもいいですよ」
ふわり、笑った彼があまりに綺麗で、さっきからずっと高鳴っていた鼓動が、また少し速まった。彼は俺よりずっと年下だというのに、どこか大人びいたこの少年に振り回されっぱなしだ。
顔に集中した熱を少しでも冷まそうと頭を軽く左右へ振ってみるけれど、勿論そんな事をしても熱は退いてくれやしない。
「旦那、顔真っ赤ですぜ」
「うるせー」
わざわざ指摘しなくてもわかってるっつーの。誰のせいだと思ってんだコノヤロー。
軽く睨んでみるけれど、彼は余裕そうに笑みを浮かべたままだ。

俺の心は既に沖田君に傾いている。先程から五月蝿いくらいに心臓が音を立てているのだ。
しかし、彼にばかり優位に立たれるのは悔しい。
だから、この気持ちを伝えるのはまだもう少し、











紡がれるは甘い旋律













2009.4.25


あきゅろす。
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