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人には、他人に踏み込まれたくない領域ってモンがあると思う。
その領域が、俺と銀色のあの人は特別大きく、特別踏み込むのが困難らしい。



例えば、だ。

近藤さんのそれは、あってないようなもんだ。
誰でもすぐに踏み込ませちまう。時には、自ら招き入れてしまう程だ。


土方さんは、易々とは踏み込ませねぇ。…だけど、あの人はなんだかんだで甘いのだ。
最初に領域を教えちまう。
此処からは踏み込んじゃいけねぇって。
相手を傷付けない為に、大袈裟に威嚇までして。
間違えて踏み込んでしまわないように。
尤も、やり方はとても不器用なのだけれども。


だけど、旦那は違う。
隙を見せたかと思えば突き放されて。近づいたと思えば遠ざかる。
笑みに紛れて拒絶する。適当な言葉を繕って、適当に笑顔を見せて。
境界線に近付けば、そうやって相手が気付く前にそっと道を逸らす。
永遠に境界線の周りをぐるぐる巡るだけ。
ずるい。
とてもずるい。
巧みに境界線を隠して、他人を領域から弾き出して、自分を傷付けないようにして。
全ては自分を守る為。


俺と似ている、とても。



生まれて初めて、心の底から愛しいと思ったその人にさえ境界線を越えられる事は拒絶する。この人だから、って問題ではないんだ。誰であろうが変わらない。

それはきっと、旦那も同じ。例え俺であっても、境界線に入れば旦那は拒絶するだろう。

逆もまたしかり。
俺は旦那の領域に入って旦那に拒絶される事は望んでいない。


それでも、少しでも旦那の近くに居たい。
沸き上がる矛盾したこの気持ち。
分かっていてもどうしようもない。




だったら俺達は、二つの境界線が重なるその場所で落ち合おう。
似ているからこそ分かるんだ。近くて遠いこの位置が、俺達に調度いい。

一番落ち着ける距離。









境界線のその上で














2009.2.23


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