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体を揺さ振られる感覚がして、緩やかに意識が浮上する。俺の名を呼ぶのはボーイソプラノ。
「功兄、朝だよ、起きて」
「んー…、あと5分…」
お約束な事を言って布団にしがみつく。覚醒しきっていない俺の鼻孔を、香ばしい臭いが掠めていく。
「朝ごはん、冷めちゃうよ」
あさごはん…、
上手く回転しない頭で二、三度繰り返し、漸く先程の薫りと繋がった。パチリと目を開くと、驚いた顔の将と目が合った。
「朝ご飯、何?」
「トーストと、目玉焼きとウインナー」
言われてみれば、確かにウインナーの薫りだ。そう思うと突然腹が減ってきた。がばりと勢い良く起き上がる。
「お早う、将。」
黙って俺の動きを目で追っていた将は、ぱちくりと瞬きをしてそのあと笑顔を作った。
「お早う、功兄」


二人揃ってリビングに入ると、薫りの発生源が食卓に並んでいた。それらはどれも食欲をそそる物ばかりだ。頬を思いきり緩めながら席についた。
「いただきます」
言うが早いか、早速目玉焼きを口に運ぶ。とろり、半熟の黄身が口の中に広がった。塩加減も申し分ない。
「うん、美味い」

向かいに座る将は、日課のランニングを終えた後らしく既に着替えている。仄に石鹸の香りもするから、シャワーも浴びたのだろう。夢に向かって精一杯努力する姿は、我が弟ながら本当にかっこいいと思う。
しかし、普段は一転して守ってやりたいと思う程可愛い。
俺の言葉にはにかむ将は、心から愛らしいと思う。


昼を過ぎ、仕事に行く為に玄関で靴を履く。後ろには、俺の鞄を持って将が立っている。
靴を履き終え、立ち上がって振り返ると、将が鞄を手渡してくれた。
「ありがとう、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
将の笑顔をしっかり目に焼き付けてから家を出る。
新婚気分だ。本当に結婚出来ればいいのにな。

しかし先程の笑顔を思い出すと、今はこれだけで十分かもしれない、そう思えた。










スイートライフ














2009.4.14


あきゅろす。
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