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俺と話している時、アレンはとても楽しそうに笑う。その笑顔を作っているのは自分なのだと思うと、とても幸せになる。
俺は俺の気持ちにとっくに気付いていたのだ。無意識の内に押し込めていただけ。感情は捨てた筈なのに、何処からか沸き上がってきてしまった愛しいという想い。
水面下で静かに、急速に広がった想いが溢れ出したのは、ほんの些細な事がきっかけだった。


「ししょう…」
任務先で同室になった時の事だ。AKUMAとの戦闘ですっかり疲れ果ててしまったらしいアレンは、ベットに入るなりすぐに眠りについてしまった。
そんな彼に笑いを零して自分も寝ようとした時だ、彼が寝言を言った。最初は何を言っているのか聞き取れなかった。首を傾げて耳を傾けると、確かに『師匠』と言ったのが聞こえた。
そして彼は頬を緩めたのだ。

俺は知っていた、どんなに憎まれ口を叩こうと、『師匠』の話をする時のアレンの瞳は、優しい光を燈している事を。単に記録していたからじゃない、彼を無意識の内に目で追っていたからだ。

ズキリ、心臓が痛くなった。原因を推測するまでもない。
俺はアレンが好きなんだ。
一度そう認識すると、想いが溢れるのはあっという間だった。薄い壁を突っ切って、後から後からとめどなく溢れ出る。
隣で穏やかな寝息を立てる彼が、どうしようもなく愛おしい。


でも、俺は知っていた、どう足掻いても、アレンの一番にはなれないという事を。
彼の目は、『師匠』しか映していない。俺が入り込む隙間なんてこれっぽっちもない。
ブックマンとして生きる為に感情を捨てた俺の、最初で最後の恋は、実る事はないんだ。


やるせなさと悔しさと悲しさと、そして僅かな安堵感を抱いて俺は目を閉じた。









良い夢を














2009.4.11


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