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せわしなく動くヅラの後ろ姿を、定まらない視線でただぼうっと見ていた。
たまにとんでもないボケをかますけれど、基本的にあいつは世話焼きでそして頼りになるのだ。
上手く働かない頭でそんな事を考える。
先程計った俺の体温は38℃ちょっと。風邪をひいたらしい。

「銀時、水飲むか?」
頷くと、コトリと枕元にコップを置いて俺の背中に腕を回し、ゆっくりと上体を持ち上げた。空いた右手でコップを俺の口元に持ってくる。一口飲むと、ひんやりと冷えた水が喉を通る感覚がした。

「もう暫く寝ていろ」
水を飲み終えるとそう言って、再び俺を横たえた。
そしてヅラは立ち上がり、俺に背を向けた。咄嗟に俺はヅラの着物の袖元を掴んでいた。
「銀時…?」
「何処、行くんだ…?」
口を出た言葉はあまりに女々しいと、自分でも思った。
しかし、風邪の時は人肌恋しくなるというのは本当らしい。ヅラが俺の側を離れようとするのが、異様に切なくて寂しかった。
ヅラはそんな俺を見て、優しく微笑む。
「コップを置いて、タオルを持って来るだけだ。汗をかいただろう?…すぐ、戻って来る。」
あやすように言う彼に小さく頷いた。しかし、彼の着物を掴む手を、どうしても離す事が出来ない。とにかく心細くて仕方ない。

ヅラは困ったように微笑んだ。
「銀時…。」
呟くとヅラは俺の隣に腰を下ろした。どうするのだろう、ずっと一連の動作を見つめていると、彼はこちらに視線を向けた。

「お前が寝付くまで、此処に居る。だから、安心しろ。」
着物を掴んでいた俺の手をそっと外すと、その手に自らの手を重ねた。先程までコップを持っていたせいか、彼の手はひんやりとしていて気持ちいい。

瞼が重くなってくる。それに従い目を閉じる。
目を閉じても、ヅラの手が離れる気配はない。
彼はもう片方の手で優しく俺の頭を撫でる。髪を梳かれる感覚が心地良い。
そろそろ本当に睡魔に呑まれそうだ。
完全に眠ってしまう前に、少しだけ手に力を入れてみると、それに応えるように俺の手を握る力も少しだけ強くなった。









relief













2009.4.7



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