君の側で
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ずっと見ていたと言ってキスをしてきた横山に何かの冗談じゃないかと思ったのだが、あの真剣な表情や欲に塗れた眼差しが、
冗談と思い込ませてくれない。
(――あ、委員長のとこ行かなきゃ…。)
準備室での事を意識しないように自分で頬を軽く叩いて、正喜の元へと急ぐ。
正喜は美術部に所属していおり、かなりの実力を持っているようで賞を取ることもあるようだ。
裕也は絵を描いている時の凛とした姿を思い浮かべるだけで胸が高鳴った。
美術室に到着すると扉が開いていて、そこから正喜のすっと伸びた背中が目に入る。
何かを真剣に描いているようで、その様子を食い入るように見つめた。
「なーに入口で突っ立てんの?入ないの?黒川を見に来たんだろ?」
と、ニヤニヤしながら美術部員の増田が絵の具が付いた肘で体を突いてくる。
「うわっ絵の具付けないでよ〜っ!!今入るってばー」
「おー入れ入れー!」
増田は裕也の耳に顔を近付け「愛しのダーリンが待ってるぞ」と囁くと、面白いくらいに顔が赤くなった。
赤面したまま、わなわなと増田を見るとニヤリと笑みを深くし、
「天才増田君は何でもお見通しなんだよ!」
と、言いながら手や顔に付いた絵の具を落とすべく、洗面所へと向かった。
「好き好きオーラ出まくってるっつーの!」
「大声で言わないでよぉー!ばかぁー!」
デリカシーの無い奴だなと少し呆れながら美術室へ足を踏み入れた。
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