君の側で
2
正喜によって教室に連れ戻された裕也は渋々授業を受けていた。
だが、春の陽気は裕也をまた眠りの世界へ引きずり込もうとする。
(うぅ〜やっぱこんな日は委員長と屋上でお昼寝したら幸せだろうなぁ…)
「浅居!!聞いてるのか!?」
「うわぁっ!はいっ!」
数学教師の横山が怒鳴りながら鬼の形相でこちらを見ていた。
ちらりと委員長を盗み見てみると、目が合い、次いで呆れた表情になった。
(馬鹿)
口の動きだけで委員長が宣った。
そんなやり取りも嬉しく思ってしまう。
「浅居。この俺様が何回呼んだと思ってんだ?お前放課後に職員室来いよ。すっぽかしたらどうなるか…分かってるな?」
「えぇー!!!ちょっとそれだけは…」
それは裕也にとって死の宣告も同然だった。
何故なら日が落ちるまで数学のプリントをやらされるからだ。
少々横暴な言い方ではあったが、数学の単位が危ない裕也を思ってのことなのだ。
「じゃあ、このあと浅居は職員室ってことで今日の授業は終わり。」
号令が終わり、横山が教室から出て行く。
すると正喜が裕也の席にやってきた。
「お前は授業中くらい起きていられないのか?」
「仕方ないよ〜!ここ凄く日が当たって気持ちいいんだもん。」
「男子高校生が"もん"と言っても可愛くないな。」
「可愛くなくてすみませんでしたねー」
こんな風に会話が出来るようになるまでどれだけの時間が掛かっただろうか。
そんな事を思っていると、正喜の手が裕也の頭をわしわしと撫でた。
「お前の補習が終わる頃に俺の部活も終わるから、一緒に帰らないか?」
裕也にとってこれ以上に嬉しい誘いはなかった。
早く終わらせて部活動に励む正喜を見に行こうと意気込むのだった。
「うん!よっし!補習なんか一瞬で終わらせてくるよ〜!」
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