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君の側で
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春の陽射しが暖かな午後の屋上。

購買で購入した大人気のオムそばパンで腹を満たし、すっかりお昼寝モード。

そっと床に手を着くと春の温度が染み込んでいて、思わず顔が綻ぶ。


「こーんな日は屋上でお昼寝だよねぇ〜」


ふぁ、と欠伸を一つ。
次いで横たわり誰に言うでもなく、おやすみなさいと独りごちれば直ぐに睡魔が襲う。

すると間もなくして頭上から声が掛かる。

「おい」

「ぅうわぁあぁ!!!!…って何だ委員長か…びっくりさせないでよぉ〜」

「…いやいや、こっちも驚くぞ。その声。」


睡魔に意識を殆ど食われていた為か、人の気配に気付かなかった裕也は些か大袈裟に驚いた。
正喜もそれにつられ驚きはしたのだが、それよりも気になる事が一つあった。


「あと5分で授業が始まるぞ?何故寝ようとしてるんだ?」

こうして正喜が声を掛けなければ、昼寝に勤しんで午後の授業に一向に出ようとしない。
学級委員として、そして、単位が危ない友人を思っての行動だった。


「えー!こんなお昼寝日和逃したら勿体ないよー!!あ、何なら委員長も一緒に寝る〜?」


「何を言っているんだ。行くぞ、裕也。」


腕を引っ張り上げられ無理矢理立たされる形となった裕也は、唇を尖らせながらも正喜の言う事に従う。


正喜に思慕を抱いている裕也にとって、このような他愛もないやり取りはこの上ない幸福をもたらした。


最近では下の名前で呼んでくれるようになったのだが、友人として認めてくれたに過ぎないのかもしれない。

嬉しさと悲さが、いなまぜになるものの、今のこの"友人"の立場がとても大事だった。


卒業するまで…いや、これから先もずっとこの思いを打ち明けることはないだろう。


自分の前を行く正喜の背中を愛おしむように見つめながら、また意志を固めるのだった。

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あきゅろす。
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