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君の側で
12
転校生の発言にもなんだか胸を刔られたような気分になった。
谷沢のような美人にそんなことを言われて、正喜は谷沢に気持ちを寄せてしまったりしないだろうか?そのまま付き合ってしまったりしないだろうか?
と悪いことばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡った。

授業中にちらりと正喜たちの席を見ると、何やら親しげに二人で一つの教科書を見ている。

(転校初日で教科書がないだけだよね。敏感になりすぎだよ自分!)

ついネガティブなことを考えてしまう自分を叱咤しながら授業に専念する。


それから一週間が経ち、そろそろ転入生へのフォローも要らなくなる頃合いだと思ったのだが、休み時間も昼休みも二人がずっと一緒にいるので正喜と話す時間は全くと言っていいほど無かった。

何とか話すことは出来ないかと、色々な隙を捜すが、やはり谷沢が正喜にべったりと離れないので隙がない。


ちらちらと様子を伺っていると、正喜は席からすっと立ち上がり教室を出た。

(…あ!)

今なら正喜に話しがあるって言って引き止められるかもしれない、裕也も慌てて廊下に出る。

「っ委員長!!」

「何だ?」

正喜は振り返らずに応えた。もうこっちも向いてくれないのかと寂しくなったが、ぐっと堪えた。


「委員長に話が」

「黒川くん!」


全てを言い終える前に谷沢が会話に割り込んできた。

「先生の所に用事?僕も着いて行っていい?」


そう言って腕を絡めると歩き出す二人。正喜が少し振り返り肩越しに目が合うが、また前を向いてしまった。


「…あ…」


引き止めて、谷沢を正喜から引き剥がす勇気なんかこれっぽっちもない。
裕也は立ち尽くすしか無かった。

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