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03変わらないもの:斎藤



笑い声がキャンパスに響いている。あ、そうかお昼休みの時間になったのかと気付いた。可愛らしい女の子達が前を過ぎる。タイツで隠れていた脚はいつからかさらけ出され、俺の心を躍らせる季節になった。


俺は大学生になった。今は大学全入時代なんて言われてるから大学生になったことは自慢できない。でも俺が入ったのは中々の偏差値を誇っている大学だ。
だってあの兵助くんと尾浜くんと同じ大学だ。



これは奇跡



うん、奇跡だ。






「お前よくその頭でこの学校入れたな、奇跡だ」

「奇跡…と周りの奴の多大なる援助のおかげだな」

「奇跡と言えばお前の髪型も奇跡的だな、バナナかそれは」

カフェオレをすすりながら彼は言った。
彼の性格を以前彼に見目がそっくりなお友達に尋ねたら「口から発せられる言葉の大半が無駄な演説の出鱈目男ですから」と言われた。
その時は冗談だと笑い飛ばしていたが、親しくなってみてその言葉があまりにも彼を適切に表した言葉だったことが判り一人で可笑しくなった。でも俺はそんな彼が嫌いじゃない。まだ出会って2ヶ月だけど、昔からの腐れ縁のような気がする。


「鉢屋くんは変わった人だよね」

「天才と変人は紙一重だからな。天才の7割が凡人から変人だと思われていた奴らだろう」

「ほんと天才だよね。ペラペラ喋る天才」

「羨むな、凡人よ」

この人はどのような環境で育ってこんな風になってしまったんだろう、と無駄に頭を捻ってしまった。ああ、いけない「こいつの全てに頭を悩ましていたら斎藤さんの時間が無くなっちゃいますよ」だった。これは別のお友達から言われた言葉だ。

「鉢屋くんってさ、付き合ってた子とか…いるの?」

「いなかったように見えるか?」

ズズっとカフェオレを飲み干し、悪戯が成功して後は罠にかかるのを見届けるだけ、そんな目をした子供のようにこちらを見た。

「うーん、付き合ってもすぐにふられそう」

「それはお前の俺に対するイメージが作り上げた想像にすぎない。が、俺はそれを肯定もしないが否定もしない」

「それ、図星ってこと?」

「否定はしない」

多分図星何だろうな。でも鉢屋くんはいつも良い意味でも悪い意味でも期待を裏切るから分かんないな。うん、この事については考えないでおこう。


「なに俺に女でも紹介してくれるって話?」

「いや、別に。ただなんとなく」

「あ、そういえばお前美人の友達いるって言ってたな」

「え!!兵助くんのこと!!?ダメダメだめ!!絶対鉢屋くんには紹介しない」

「兵助…くん?男?」

「あ、うん。男!そう男!」

鉢屋くんが勘違いしたのを良いことにそのまま兵助くんを男の子に仕立て上げた。だって鉢屋くんと兵助くん絶対合わない気がするし。それに大切な兵助くんを男の子に会わせるなんて…

俺は父親のような使命感に駆られ、必死に言い訳をした


「もしかして…あ、斎藤好きだった?そいつんこと」

「え!!何でわかるの!!」

一瞬の沈黙が流れた。あれ、恥ずかしい。なんか変な事言ったかな?





「…斎藤お前…ゲイ?」

あ、俺ゲイになっちゃった。はは、大失敗ーあははー
俺ノーマルだよ、女の子大好きだよ



「俺、お前のこと全く興味ないからな。悪いけど」


もう誤解を解くのも面倒になって俺ははあ、と大きな溜め息をついて空を見上げた。
緑色の葉から漏れるわずかな光が俺の未来を差す光がわずかだと暗示するようで悲しくなった。



「ゲイじゃないもん…」



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