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02ただ脈絡もなく:不破


「おそいね、はち」

「そうだな。今現在で38分20秒の遅刻だ。その時間があれば俺は隣のCDショップのアーティスト名を全て言い終えることが可能だな」

「本当きみの嘘は時に本当のように聞こえるから困る」

「嘘?嘘っていうのはその人間が嘘って思ったから嘘になるんだよ。だから今の話の真偽は定かではないが君が嘘だと思った時点で嘘の情報になった」

「つまり、君は退屈なんだね」

「…うん。ヒマ」

僕には気心がしれた奴が2人いる。このうんちく野郎「三郎」と38分20秒遅刻をしている「はち」だ。
「三郎」はマンションの同じ階に住んでいて、小さい頃からの腐れ縁だ。そして「はち」とは高校で知り合った。以来何をする訳でもないのにこうして集まってしまう。


「あ、今日のご飯は鍋だよ。食べに来る?ってお母さんが」

「あーそうだな。家にあの人がいなければ行くわ」

「あの人」とは三郎のお母さんの彼氏さんだ。「あの人」は三郎と波長が合うらしく(三郎が自分で波長が合うと言うことは奇跡にちかい)中々良い関係を築いてるらしい。

「お母さんは再婚しないの?」

「さあな、俺が家でたら家政夫みたいな奴とするんじゃないか。死活問題だからな。」

「寂しい?」

「全然。それよりあの女を一生の相手と選んでくれる方がいるならば俺はそいつに勇敢な戦士という称号を与えたいね」

「そっか、僕はお前に無駄な言葉が弁舌という称号を与えたいね」

「君の俺に対してだけ容赦ないところは素敵だと思いますよ」

「ありがとう」

三郎いわく「46分15秒の遅刻」ではちは到着した。

「わっりーいっちゃん下の弟が熱だしてさ。しかも携帯代払ってなくてとまってるし」

はちらしい理由にほほが緩んだ。はちが笑えば世界が少し優しいものになる気がするから不思議だ。

「で、今から何すんの」
はちはグラスの水を一気に空にしてから聞いた。

「物件探し」

「は?なんだそれ?あ!てかさ、俺さ、中学ん時好きだった子が同じ大学にいるかもなんだけど!」

「…情報原次第でお前はストーカーだぞ」

「うっせ、同中の奴とこの間会って、たまたまそいつの話になって教えてくれたんだよ」

たまたまねえ…明らかに怪訝そうな顔をする三郎を見てつい鼻で笑ってしまった。それをはちに見られ誤解を招いた。はちを馬鹿にするつもりなんてなかったのに悪いことしたなあ。

「中学生であんだけやばかったから今すっげー美人だろうな」

「中学生というのはまだ発達段階ではあるがその時に美人なら元は美人だろう。しかし人間は磨く努力をしないと曇ってしまうものだ。また制服というオブラートもなくなってその子のセンスが問われる時、美人というメリットだけではカバー出来ないこともある」

「俺さ、こいつと友達やってる自分を時々無性に誇らしく思う」

そのはちの言葉に心の底から同意した。こいつの性格が大学で変わることを祈りつつ、半ば諦めて冷めたコーヒーをすする。




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あきゅろす。
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