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撮影現場?


 
気晴らしにと訪れた裏山の花畑。

そこで赤髪の彼女が見たのは

血だらけで倒れている少女だった。



  撮影現場?



ぼんやりとした意識の中、目を開けると見知らぬ天井がそこにはあった。
自室とは比べ物にならない程広い天井に、半ば驚きながらも見回す為に首を少し動かせば、固くなり動かし憎くなっている感覚と共に鈍い痛みが走る。
自分はいつから、こうして横になっていたのだろうか。
疑問ばかりを頭に浮かばせながら痛さを堪えてゆっくりを身体を起こしてみると、やはりそこは見覚えのない部屋だった。
日本離れしたドラマや舞台のセットのような部屋も驚きはしたが、部屋の窓から覗く庭にも、綺麗に整えられた花壇や噴水が伺え、驚き過ぎて声も出ない。
いや、身体が固まってしまっていた事を考えると、実際に出ないのかも知れないが。

誰かいないのかと、軋む身体をゆっくり動かして寝ていたベッドから降りると、外から話し声が聞こえてきた。
窓まで行き庭に目をやると、赤髪の青年に紫髪のとても長いツインテールの少女、そして青年に対して感情を高ぶらせているように感じる奥様らしき人が伺える。
何をしているのかなど解るはずもないままその光景を見ていると、不意に少女がこちらを向いた。何も疚しい事はしていない筈なのに、見知らぬ家の見知らぬ部屋で目を覚ましたからか、少女と目が合うと途端に逃げ出したい衝動に駆られる。少女はというと、不思議そうに首を傾げていた。その仕草がなんとも愛らしくて今度は照れてしまうが、これではただの挙動不審な変質者ではないかという事に気づき軽く肩を落とした。それでも、服装や髪色はかなり変わっていて髪の長さも尋常ではない少女は、天然っぽくて可愛いと素直に思う。
そんな事を考えていると急に扉をノックする音が聞こえた。間髪入れずすぐに扉が開く。そこには赤髪のお姉さんが立っていた。私に気づくと驚いたように目を見開く。
疚しいことはしていないが、これはもう謝るべきだと瞬時に判断し私は息を吸い込んだ。が、予想に反して声は出ず代わりに喉を押さえて盛大に咽せる。

「ちょっと、大丈夫ですか!?」

近づいて背中をさすりながら声をかけてくれたお姉さんに全力で頷くと、腕を借りながらベッドに座り込む。

「暖かい飲み物、持ってきますね」

そう微笑みながら言い、お姉さんは部屋を出て行ってしまった。今の内に落ち着こうと深呼吸をする。どうやら私は、ここにいても問題ないみたいだ。でも、どうして私はこんな見知らぬ場所にいるんだろうか、確か私は────
思い出そうとすると、背筋が震えた。その震えから思い出す。どうして、私は生きているだろう…?
ノックの音がして、扉が開く。先程のお姉さんがお盆に湯気の立ったコップを乗せて入ってきた。その後ろを庭にいた赤髪の青年と紫髪の少女が続いている。

「熱いから気をつけてくださいね」

そう言いながらコップを渡されたが“私、猫舌なんです。熱いのはちょっと……”なんて言えるはずもなく会釈をして受け取った。それにしても、青髪の青年もそうだがどうしてこの人達はこんな衣装を着ているのだろう?どうして変わった髪色をしてるのだろう?何かの撮影なのか?
そんなどうでもいい事を考えながら渡された飲み物を火傷しないようゆっくり口に含む。ほんのり甘い香りのする紅茶が喉を通っていった。落ち着いて、ホォと息を吐いたあと試しに声を出してみると小さく掠れ気味ではあったが“あ゛ーーー”と間抜けな声を出すことが出来た。よかったと安堵すれば、お姉さんと青年も笑ってくれていた。

「よかった、声が出なくなってたらどうしようかと思いました。私はシェリア、こっちは───」
「アスベル・ラントです。よろしく」





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