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いっぱち物語(仮)
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でも、悪いねクマさん。

クマさんにゃー泣き顔ばっか見られてるし、望み薄そーな男をネチネチ想い続けてる女々しいとこも知られてるけどね、オレも男なんよ。プライドあんの。いつまでも女々しいとこ見せたくないの。誰かの手を借りなきゃ立ち直る事もできねーとか思われたくないわけ。

クマさんにはいっぱい助けられてるから尚更。

クマさんは既にオレにとって大切な人だから、迷惑かけたくないとか思うし、もじゃから助けたいと思うし、護りたいと思う。

やられっぱなしは性に合わねー。

って、喧嘩腰にゆー事でもねーけど。

と、インターホンが鳴る。

んー?今授業中じゃないっけ?誰だべ?

「どっちらーさまー?」

ドアは開けません。無闇に玄関扉は開けないとかいー子ちゃん発言とかじゃなく、単純に今の顔は見せらんないだろってゆー。

………返答がない。

シカトかい。こんにゃろーめ。

ドアスコープを覗いても誰だかわかんね。ドアに体を預けてるらしく肩が少し見える程度。

あんれー?なーんか上下?に?動いてる?

ドアに耳をピッタリくっつけると微かに聴こえる、ハアハアと荒い呼吸音。

……………………………ドン引き。

新手の変態電話(?)ですか?

「……あー…と…今日のパンツは色気のないベージュです」

「……ハッ…ハッ…き…て…無ぇ…よ…ハァッ…」

息も絶え絶えにツッコむとは!!てちげー!!この声クマさんじゃん!!

「クマさん!!」

「がっ!!」

急いでドア開けたら勢いでクマさんのデコに直撃。ガンッて。

………ソーリー…

「わーりぃクマさん、割れてない?」

壁に手をついて、もー片方でデコを抑えて悶えてるクマさんの背中を撫でる。

デコ痛いやら息上がってるやらで苦しそー。それを裏付けるよーにワイシャツの上から触れる背中がジットリと濡れてる。

濡れてる?

あれ?まさか…

「…………もしかして、走って来たの?」

ここまで?

そもそもさっきの電話ん時どこ居たの?

ここは校舎も寮も金持ち仕様でデカイ。広い。それに運動不足改善とかゆー名目で少し離れた場所に建ってる。だからどんなアスリートが全力疾走しても10分はかかる距離だ。の筈。

10分、かかってない、よ、ねー…?

メガネを少し押し上げて、親指と中指で揉むように擦ってる。汗が入んのかな?汗すごい。ポタポタ落ちてきて、髪の毛なんて雨も降ってないのにしっとりと濡れてる。シャツもスラックスもピッタリ張り付いて気持ち悪そー。

……呆れた。

何してんのこの人?

『勝手に』の結果がこれなわけ?

40近いオッサンが全力疾走?

「おい」

「は?」

「何笑ってんだよ」

ぶすくれてる。そんな顔も愛嬌あんね。笑いたくもなるっしょ。今だに荒い息、上がった体温、流れる汗も、その全部に愛を感じるよ。

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あきゅろす。
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