いっぱち物語(仮)
8
現れたのは会計、一先輩だった。
「な、ななな、何で服着てないんだよ!!」
顔を赤くして奴が叫ぶ。
「アーハン?んな使いもんになんねー目ん玉抉って捨てろよ」
そう言う一先輩の格好は、厳密には着てる。ただ、制服は完全に脱いだ状態だ。ロンTとボクサーパンツ、のみ…
ジャケットとスラックスは……?
流石に僕も取り巻きも固まった。
「ちゅーか真っ赤んなりながら鼻息荒くせんでくんない?まじキメェし」
絶句し、憤慨する奴。敵意もあらわに一先輩を睨みつける取り巻き。僕は固まったまま。
この時、僕はちょっと見とれてた。
間近で見たのは初めてだった。
他の役員は初めから敵意剥き出しだったから、こちらも印象は悪かった。でも一先輩は転入生を嫌ってるって、何時だか聞いてた。だから余裕があったんだろう。役員に選ばれるだけあって顔は小さく整ってる。寝起きなんだろう、眠たそうにゆっくり瞬く度に睫毛で影ができる。首を掻く長い指も、手も、骨張った男の物なのに綺麗だと思う。腰の位置も高く、スラリと伸びた、筋肉の付いた引き締まった脚も爪先に至るまで魅了される。
男でも綺麗ってあるんだ。
大口を開けて欠伸をする様も、寝癖の付いた毛先も、その無防備な自由さが彼の魅力なんだろう。気取らないその姿に目を奪われた。
だがその格好に批難を向ける取り巻き、セフレがどうとか、それを聞いてまた唾を飛ばしながら喚く奴、眠そうに、面倒臭そうに、それでも自分の言い分を伝える一先輩。
「オメー等バカ?オレ仮眠室から出て来たじゃん?ちゅー事は寝てたんじゃん?制服んまま寝るとシワんなんじゃん?とーぜん脱ぐじゃん?ちゅーかアラーム一時間設定してんだけど。あと30分あんだけど。ちゅーこってお帰りはあちらです〜」
手の平を上向けて扉を示す。
「さ、最低だ!最低だ!最低だ!見損なったぞ!!」
「相手は中に居るんですか?汚らわしい。大体そんな格好で星輝の前に…変態もここに極まれり、ですね。星輝、見てはいけません。変態が移ります」
そう言って奴の視界を手で塞ぐ。
移るわけないだろ。この人も随分頭の悪い発言をするようになった。
「はーいー?副会長に言われたくねーんスけどー。どーせ頭ん中では夜な夜なそこのもじゃいヤツ犯してんしょ?テメーのちんこそいつのケツ穴ぶっ込んで中出ししてるとこ想像しながらシコってるクセに、人に向かって変態とかマジウケんだけど。あー、それとも夢で見ちゃってる系スか?夢精しちゃってる系スか?中坊かよ」
「っ―――!!」
真っ赤になって二の句が告げない副会長。まさか図星か?
一先輩は追い討ちをかけるように尚も続ける。
「どさくさで転入生触ったその手で今夜はお楽しみですかー?尺って貰ってんの想像したりー?それとも転入生に見立ててセフレとイメージプレイすか〜?」
にやにやと笑いながらゆっくりこっちに近付いて来る。
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