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 好きな理由


あぁ…ダメだ…やっぱ無理。

我慢なんて出来ない。
だって俺、こんなにも土方が好きなんだぜ?


「土方ァァァ!!!!」

「おわっ!?」


いつも一緒に居たいから、毎日屯所まで会いに行くんだ。
で、土方を見つけるとつい飛び付いちまうんだよなァ…。


「てめっ…毎回飛び付いて来んな気持ち悪ィ!!」

「気持ち悪いはひどーいっ!!
私はただ土方君が好きなだけなのにィ〜」

今日は女装をして、ちょっと女っぽく喋って上目遣いとかしながらすり寄ってみる。

「土方君…気持ち悪いとか言わないでさ、私に興味持たない?
今ならお触りも少しだけなら許しちゃうんだけどな〜」

「興味なんざねぇよ。
誰がお前みたいな奴の体触るか」

冷たく言い放った土方は、俺を引き剥がして機嫌が悪くなったようにズカズカと歩いていってしまった。


「…はぁ……」

毎日毎日アピールしてるのに、俺の恋はまだまだ実りそうにない。
土方はいつも俺の言葉を聞き流しちまう。

そんなことを1人で悩みながら歩いていると声をかけられた。


「どうかしたんですかィ旦那?」

「ん…沖田か…………そうだ!!

あのさ、ちょっと相談に乗ってくんねぇ?」


1人で考えるより2人で考えた方がいいと思った俺は、沖田に相談することにした。

沖田の部屋に行って、相談に乗ってもらう。意外にも真面目に相談に乗ってくれた。

「んでさ…どうしたら土方は俺のこと見てくれんのかな…」

「ん〜土方さんはヘタレですからねィ…めげずにアピールし続ければいいんじゃないんですかィ?」

「別にめげちゃいねぇけどよ〜…
もっとこう…簡単に、かつ高確率で振り向いてもらえる方法とかねぇのかなって」


今の土方は振り向くどころか俺を見ようともしてないみてぇなんだけどな…。

どうして土方は俺を見てくれないんだろうか…そんなに俺が嫌いなのかな。


「……じゃあこんなのはどうですかィ?」

「お、どんなのどんなの!?」

「女に性転換する」

「いや…それはちょっとな…大体そんなことする金ねぇし」


やっぱ土方が求めてんのは俺みたいな男じゃなく女なのか…?


「冗談でさァ。

押してダメなら引いてみろってのは試さないんですかィ?
他にも…最近流行りのツンデレとか眼鏡っ子とか、あとは…」

「ふむふむ…なるほどな…」


さっすが沖田君、色々な方法知ってんなァ…

沖田が言ったこと一応全部メモった。今度実行してみるために。


「…クス…旦那ァ…そんなに土方さんの事が好きなんですかィ?」

「え?
…あ、あぁ……こんなに好きになったのは土方が初めてだ。
俺もまさか男を好きになるとは思ってなかったけどな」


なんて言いながらケラケラ笑う。

本当に…なんで俺はこんなに土方を好きになったんだろうか…
そんな疑問が頭の中を駆け巡ってなんだか…虚しくなってきた。


片思いってこんなにも辛いものなんだなとか考えちまって…段々弱気になる。


「…やっぱ俺には幸せになる資格なんてねぇのかなァ…
毎日アピールしてもただ嫌がられるだけでさらに嫌われてる気がしてきた…」

「…旦那……」

「……よし、決めた。
俺もう土方にアピールすんの止めるわ。
よくよく考えたら今までの俺の行為って、土方の仕事の邪魔してただけだもんな」


そう、俺はただ迷惑をかけていただけなんだ。
だから振り向いてもらうなんて最初から無理だったんだ。


もう……
土方には近づけねぇなァ…。

そう思うと悲しくなってきて……目の前には沖田がいるにも関わらず、涙が頬を伝った。


さよなら、俺の初恋……
なんて柄にもないことも思った。


「…旦那を泣かすなんて、アンタに人を好きになる資格ないんじゃないんですかィ?
…なぁ土方さん……」

「…え…?」


沖田がそう呟くと、後ろに人の気配を感じて泣いているのも忘れてふっと振り返った。

そしたらそこには土方が立っていて……

「ひ…土方…?」

「………銀時…」


なんでここに土方がいるのか分からない。そして真っ直ぐに俺を見ている土方から目を逸らせなかった。






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