終わりよければ全てよし
今日も特にすることがなく…ソファーに座ってぼーっとテレビを見ていると、パー子が隣に座ってするりと腕に抱きついてきた。
「銀ちゃ〜ん」
「ん〜なんだ〜?」
抱きついてきたのは気にせずに返事だけすると、黙ったまま抱きつく力を強めて頬擦りをしてきた。
パー子がこういう事をしてくるのは、甘えたくなった時か何か嫌な事があった時だ。
きっと嫌な事があったのだろうと予想した俺は、頭を撫でてやり優しく声をかける。
「…友達と喧嘩でもしたのか?
それともバイト先でなんかあったか?」
「…ううん、何もないわ。
ただ一緒に居たいなぁなーんて思っただけよ…」
そう返事が返ってきたけど…腕にしがみついたまま離れない所を見れば、明らかに何かあったのが分かる。
どうしたものかと考えていると、いきなり頭を抱き締められ頬に一瞬だけ違和感を感じた。
「銀時ー♪
俺の深ーい愛は受け取ってくれた?」
「あー…いらないキスなら」
「ひっでーなぁその言い方〜」
素直に喜べばいいのに、とかふざけたことを言いながらぎゅーっと俺の頭を抱きしめてくる金時。
「そうだ、今から俺と出かけようぜ銀時。…デートしよう♪」
勝手に話を進めていく金時に少し呆れて嫌だと答える。いや、答えようとした。
「銀ちゃんはアタシと家に居るって約束してるんだからダメよ!!」
「…パー子…?」
抱きついてずっと黙ったままだったパー子が、金時の“一緒に出かけよう”という言葉を聞いて怒鳴った。
「なんだよそれ。
家に居たいなら1人でいいだろ。
銀時は今から俺と出かけんだよ」
金時に腕を掴まれてグイッと引っ張られる。そのせいでバランスを崩し金時の方に倒れかかる。
何すんだいきなり!!と言おうとしたら今度はパー子に引っ張られてパー子の方に倒れる。
「それは金ちゃんだって同じでしょ!!1人で行ってきなさいよ!!
銀ちゃんは渡さないから!!!」
「はぁ?
渡さないからって…銀時はお前のもんじゃないだろ」
「うるさい!!!
絶対銀ちゃんは渡さない!!
…銀ちゃんだけは…渡さない…」
最後に言った一言は聞こえるか聞こえないかの声で呟いていたが、俺にははっきりと聞こえた。
「…パー子、」
「やだ!!行かせないから!!
銀ちゃんはここに居るの!!!!」
必死になって首に腕を回し抱きついてきたパー子の声は、微かに震えていた。
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