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 好きって言って

【同級生パロ】


「じゃ、部活終わるまで待ってるからなトシ」

「あぁ。終わったらすぐ行く」


約束した。
でもこれはいつもの事だから、別に約束しなくても一緒に帰るんだけど。

トシは剣道部で俺は帰宅部。
部活なんてダリィだけだししようとは思わない。


今日もトシは部活。
だから俺はいつものように教室で待つ。

トシは気づいてないけど…
本当はこの時間がものすごく嫌だったりする。
シーンとした教室でたった一人でいるのが寂しいのもあるけど、一番の理由は……置いていかれるんじゃないかって不安なんだ。


俺はトシが好き。
すごくすごく大好き。
欲を言えば一時も離れたくない。

トシも俺が好きだって言ってくれた。
でもそれは最初だけで、今は言ってくれない。


だから不安なんだ。
俺の事飽きちゃって…別れようなんて言われたらどうしようって。

最近はあんまし俺にかまってくれなくなったし、一緒に帰る時もあまり喋らない。


ねぇトシ……

俺に飽きちゃったの?
俺と別れたい?
俺が…邪魔?

もしそうなら……
俺はもうお前に近づかないから…

好きじゃなくてもいいから、嫌いにならないで。


「もう別れようかな…
そうすればトシも楽かもしんないし…」


喜ぶかもしれない。



なんだか悲しくなってきて、
泣いた。

一人で声を殺して泣いた。
静かな教室で誰にも見られないように泣いた。

止めたくても止まらない。
悲しくて、寂しくて、トシが大好きで……


「うぅっ…すき…としぃ…」

そう呟いた。
でもそのせいで余計に涙が溢れてきた。

それからずっと泣き続けて…
気がつけばトシが来る時間になっていた。

急いで涙を拭って来るのを待つ。
今日の内に別れよう……そんな事を思いながら。



「……遅いな…トシ…」


いつもならとっくに教室に来るのに今日はまだ来ない。

「…帰っちゃったのかな…」


仕方なく、一人で帰ろうと靴箱へ向かう。
ふとトシの靴箱を覗いてみたら、まだ靴があった。

どうしようか悩んだけど今日は帰る事にした。

そして…トシに手紙を書いて、それを靴箱に入れて学校を出た。



『別れようトシ。
今までありがとう、ごめんね。』

それだけを書いた手紙。
トシは喜んでくれるかな。
これで……よかったんだよね…


「トシ…好きだったよ…」


きっと俺はこれからもトシの事好きだと思う。
でも、もうその気持ちを伝えようとはしないから。


「…ト…シっ……」

教室で散々泣いたのに、また涙が出てきた。
何度も何度も名前を呼んで…

好きという気持ちはより一層大きくなって……


「銀時!!」

「と、トシ…?
なんでここにッ…」


後ろから名前を呼ばれて振り返ると息を切らしたトシが。
右手には俺が書いた手紙を握りしめている。


「…どういうつもりだ!!
なんで別れようなんて…」

「…別れた方がいいよ…俺たち」

その方がトシも幸せだろうし。


目を合わさないように少し俯いて話す。
今トシの顔を見たらダメだ、そんな気がしたから。


「…俺…なんかしたか?
嫌なことしちまったんなら謝る。
気に食わない事があんなら直すから……別れようなんて言うなよ」



やめてよ


これ以上優しくしないで…
その優しさに…俺はすがってしまうんだ。


「…もう疲れただろ、俺の相手をするのは。
これで自由になるじゃねーか!!」


トシが好き

「もう……」

好き…大好き…

「ッ…もう気を使うな!!逆に辛いんだよ!!悲しく…なんだよ…」


トシに向かって、叫んだ。
これで…トシとの関係は本当に終わったんだ。

そう思うとやっぱり辛くて…
もっと涙が溢れてきた。


俯いたままで動けずにいると、
次の瞬間にはトシの腕の中にいて…優しく包み込まれていた。


「っ…やめろ…よ…離せ…」

「誰が離すかよ……」


ぎゅっと力強く抱き締められて…
キスしようと顔を近づけてきた。

そして無意識に、トシを突き飛ばした。


「ッ…や、やめろ!!
もう俺に触れるなよ!!こんな時だけ優しくすんな!!
トシなんて…トシなんて…ッ」


大嫌いって言って突き放したいのに、体が言うことを聞かなくて…言えない。

きっとまだトシが大好きだから。

離れたくないから…
傍に…居たいから…


「…もう嫌だよ……なんでこんなに辛い思いしなきゃいけないんだ…」


こんなことになるって分かってたら…トシなんて好きにならなかったのに。


「…銀時……すまねぇ」


ほらやっぱり…
俺と別れたかったんでしょ。だから態度で表現してたんでしょ。


「お前がそんなに傷ついてるなんて知らなくて…情けねぇな」

「……」

「勝手に思ってた。
お前が俺を好きで、俺がお前を好きで…一々好きだと言わなくても平気だって…」


ゆっくりとトシが近づいてきて…俺の頭を撫でた。
優しくあやすようにゆっくりと。


「ごめんな。
でもこれだけは分かってほしい。
俺は…お前しか見えてねぇ。俺が好きなのは…お前だけだ」


トシが俺を好きだって?
本当に…?

その言葉…信じてもいいの?


「…トシ…」

「大好きだ、銀時」


あぁそうだ…この顔。
俺にだけ見せてくれる顔だ…。

優しくて、暖かくて、落ち着く、トシの笑った顔。

「トシ…俺も大好きだよ…ずっと傍に居たい」


俺からトシに抱きついてそのままキスをした。


深くて、甘い口付け。
今までしてこなかった分、たくさんキスをした。


「ふッ……はァッ…」

「可愛いな…もっと好きになっちまった。
あと、抑えられそうにねぇや」

「ん…じゃあトシの家行きたい」


その後の事は……
俺とトシだけのヒミツ。



END


後書きと言う名の謝罪


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