小さな幸せ
今日はなんやかんやで帰んのが遅くなっちまった。
日は沈みかけていて辺りはもう薄暗くなってる。
「…早く帰んねぇと銀時が心配すんな…」
寂しがり屋な上に心配性だからなアイツ。まだガキなのに強がって大人のフリをするし…。
「…フ…俺のガキの頃と何ら変わらねぇな」
こういう時に俺たち兄弟なんだなって実感する。
見かけはほとんど同じで、中身もほとんど同じ。
違うのは…年だけか…。
そんなことを考えながら階段を上って玄関の方を見やると、銀色の髪が風に吹かれてゆらゆらと揺れているのが見えた。
「にぃちゃん!!」
そう聞こえたのと同時にバタバタと走ってくる可愛い俺の弟。
抱っこしてやろうと思いしゃがんで待っていると、銀時は途中で転けてしまった。
俺は慌てて駆け寄り抱き上げて声をかける。
「大丈夫か?銀時」
「うぅ……
これぐらいへーきだもんっ…」
精一杯強がってはいるが、目には涙が溜まっていて今にも泣きそうな面してやがる。
それがおかしくて…そして無性に愛しくて思わず笑みが零れてしまった。
「むっ…
なにがおかしいんだよぉっ」
「フ…悪ィ悪ィ。
…ただいま、銀時」
「…へへっ…おかえりなさい、
にぃちゃん!!」
満面の笑みを浮かべて思いきり抱きついてくる銀時がどうしようもなく愛しくて、俺も思いっきり抱き締めてやった。
…ブラコンだな、俺。
「くしゅんっ!」
「ん…そろそろ家に戻るか」
銀時を抱っこしたまま家の中へ入る。そーいや晩飯作んねぇといけないんだっけか。
銀時をソファーに降ろして何が食いてぇか聞いた。
「うーん……今日はスパゲッティがいいかなぁ」
あ、それ俺も思ってた。
さすが俺達。
考える事まで一緒、か?
「よっしゃ。
ちなみに何スパゲッティ?」
「クリーム!!」
はは、それまで同じだ。
じゃあ待ってろなと言って台所へ向かえば、なんだか朝と風景が違って見えた。
「………食器が洗われてる?」
朝の時点では確か朝使った分の洗われてない皿やらコップやらが流し台にあったはず。なのにない。
…もしかして……
「銀時ー、お前食器洗ったか?」
「あ、うんっ。
にぃちゃん、いつも帰ってくる時間に帰ってこなかったからきっと疲れて帰ってくると思ったの。
だから少しでも楽させてあげたくて…」
あぁ…本当コイツは…なんていい子なんだ。んでもって、俺はこんなに想われてなんて幸せ者なんだろうか。
「あ、お風呂も入れてあるよ」
「…そうか…ありがとな、銀時」
「へへへ…どういたしまして」
よし、明日は土曜だから銀時と出かけて好きなもん買ってやろう。
思いきり甘やかしてやるか。
銀時が大人になった時には…俺はもうおっさんだからなァ。
それに…こんなに想われんのも今の内だろうし。
一緒に風呂入る事も、入ってる時に大好きだとか言われる事もなくなるんだな。
「にぃちゃん大好きっ。
ずーっとおれと一緒に居てね?」
「俺も大好きだ。愛してる」
つかずっと一緒に居てとかこっちの台詞だったりして。
俺ァお前を手放したくねぇよ。
END
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