1
大学へ入学して数か月が経った。
バイトに勉強に遊び、それぞれ適度に楽しんで大学生の生活が慣れてきた頃。
縁があってか、近藤さんや総悟とは違う学部ではあるが同じ大学に通っている。
そんなある休みの日の会話。
「トシ、お前どうして彼女作らないんだ?」
「っな、なんだよいきなり…」
唐突に、近藤さんに質問された。
そんなのどうだっていいだろ、と誤魔化すが今度は総悟が食い付いてきた。
「モテる男は求める女のレベルも高いんですかねィ」
「…お前な…」
「それとも、もう付き合ってる奴がいるとか」
「何ィィィ!!!!
一体誰なんだトシ!!まさかお妙さんとか言わないよな!!」
「違ぇよ。
つか付き合ってる奴とかいねぇ」
というか近藤さんまだあの女が好きだったんだな…。
そんな会話をしていると総悟がバイトの時間だからと俺達と別れ、近藤さんも用事があるからと俺と別れた。
「…まだ時間あるな…」
今日はバイトはない。
だからといって特にすることもなかった俺は、ぶらぶらと街を歩くことにした。
買うものもないから本当にただ歩くだけ。
まぁ運動と思えばいいか、とか思いながら決して多くはない人混みの中を歩いていた。目の前を銀色の髪をした奴が通り過ぎるのを見るまで。
ボーッとしていたためにしっかりとは見えなかった。
だが確かに目の前を銀色が通り過ぎた。
無意識に足を止めて通り過ぎた先を見てしまう。
銀色を、探してしまう。
「……見間違い…か…」
辺りを見回しても銀色は見つからなかった。
まだ意識しちまうのか…
心の奥底ではまだアイツを追ってんのか…
忘れていた記憶が思い出される。
忘れていた感情が…込み上げてきそうになる。
「…チッ…」
(忘れろ…他のことを考えるんだ)
軽く深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「あっ、土方先輩っ!!」
ふいに、声が聞こえた。
この声で俺を先輩って呼ぶのは…銀時しかいない。
声がした方を振り向くがどこにも見当たらない。
…今度は聞き間違いか?
そう思っていると腕を掴まれた。
「久しぶり先輩っ!!
元気にしてた?」
「…え…銀…時?」
「わっ、ひっどいよ先輩!!
まだ数か月しか経ってないのにもう俺のこと忘れたの!?」
いや、そんなこと言われても…
「女装してんのを見切れる程俺はお前を知らねぇよ」
「…あ」
久しぶりに銀時と再会したのはいいが…まさか女装してるとは。
つか銀時ってそういう趣味があったのか…?
「っ…さ、最悪だ…先輩に見られちゃった…」
真っ赤になって顔を隠す銀時。
先輩にだけは見せたくなかったのに…こんな格好…
とかブツブツと呟いている銀時の頭に軽く手を置いて宥める。
「まぁ…趣味は人それぞれだろ」
「ほらぁ!!先輩勘違いしてる!!
俺こんな趣味ないからね言っとくけど!!」
無料HPエムペ!