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「ねぇ先輩……」
「…なんだよ」
「…俺と先輩はね、俺がこの高校に入る前にも会ったことあるけど…覚えてる?」
まさかの発言に俺は一瞬だけ戸惑った。
会ったことある…?
いつ、どこで?
思い出そうと記憶を巡らせていると、銀時はクスクス笑った。
「やっぱ覚えてないよね。
あの時…俺すぐ逃げたからなぁ」
銀時の話によると、銀時がまだ中2だった頃…つまり俺が中3だった頃に会ったことがあるとか…。
その頃の銀時は学校で苛めにあっていて、不登校気味になっていたらしい。
ある日、勇気を振り絞って久々に学校へ登校している途中…苛めをしてくる奴らに会って、道端にも関わらずその場で苛められた。
髪の毛の事を茶化されて引っ張られたりしていた。
銀時は泣きながら「やめて」と抵抗したが勿論やめるはずがなく、服を脱がされたりと段々苛めは酷くなった。
自分ではどうする事も出来ずにその場にうずくまっていた時、
「その時……誰かが助けてくれたんだ。
俺はただ、泣きながら震えててしっかりとは見えなかったけど…その人はいじめっ子達を追い払ってくれて、そして俺に近づいて優しく声をかけてくれた。
初めてだった…俺を助けてくれてすごく嬉しかった。
なのに、その時の俺は礼も言わずに逃げ出した。
でもね、助けてくれた人の顔はちゃんと見たんだ」
…あぁ…思い出した……
あの時のいじめられっ子か…
「…思い出した?
助けてくれたのは、土方先輩だったんだよ」
そう言ってにっこり笑うと、体ごと俺の方を向いて礼を言った。
「あの時は本当にありがとうございました。
先輩が助けてくれたおかげで…俺はこうして生きてる。こんなに変われた」
銀時はにっこり笑っていた。
が、段々目に涙が溜まり…ポロポロと泣き出した。
「あ…れ…おかしいな……やっと…やっと言えたのに…悲しくなんかないのに……涙が止まんない」
何度も何度も涙を拭って、
それでも止まらない涙に困って、俯いてしまった。
そして俺は、無意識に銀時を抱き締めていた。
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