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 違う立場で出会えたら


「行けェ!!突撃だァァ!!!!」


今、高杉率いる鬼兵隊のアジトへ突撃した。
とうとう…高杉を捕まえる時がきたんだ。

周りの奴らが死ぬ気でアジト内を捜索する中、俺は…複雑な心境だった。



過激派と言われ、攘夷志士の中でも恐れられていた…高杉晋助。


そいつが今…俺の目の前にいる。
刀を握り、高杉を見る。



「…先生ェ……」


高杉は、俺を見るどころか…俺の存在にすら気づいてなかった。
魂が抜けたような面をして……何かを呟きながら、ただ空を見つめていた。

一目見ただけでも分かる。
コイツはもう…壊れかけている。


少し前に見た時は普通だった。いや、普通に振る舞っていた。
そうだ…俺はコイツの異変に気づいていたんだ。


でも、どうすることも出来なかった。
何もしてやれなかった。

俺たちは、敵同士だから。


「…高杉……」


「先生…おれはもう……

楽になってもいいですか」


高杉の口からそう発せられたと同時に、


高杉は刀を手に取り、自害しようとした。


「っ…やめろ…ッ!!」


間一髪のところで刀を奪う。

高杉は…虚ろな目で俺を見た。
が、表情は全く変わらず…動こうともしなかった。


「…もう…楽にさせてくれよ」

「ッ…高杉……くそっ!!」


俺は…込み上げてくる苛立ちをどうすることも出来ずに、ただ唇を噛み締めた。


俺とお前が敵同士じゃなかったら
今ここでお前を抱き締めてやれるのに。








もし…違う立場で出会えたら

俺はお前を救えただろうか。



END


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