年の差なんて関係ない
俺が勤めている会社は結構大きな会社で、そりゃあもう勤務初日は不安いっぱいで嫌になりそうだったな。でもそんな俺に声をかけてくれたのが、阿伏兎先輩だったんだ。
『おいそこの新人、そんな気を張り詰めちゃあ空回りするだけだぞ〜』
『えっ…あ、俺…ですか?』
あん時は本当に嬉しかった。
右も左も分からないような時に、手を差し伸べてくれたから。
「おい坂田、手が止まってんぞ。
あと仕事中にニヤニヤしてんじゃねぇよまったく」
「…へへ、すいませーん阿伏兎先輩〜」
「笑って誤魔化してんじゃねぇ、こんちくしょー」
そういや今仕事中だったな。因みに今は阿伏兎先輩と二人きりで倉庫の片付け中。
口では色々言ってくるけど、本当は優しくて頼りになんだよな阿伏兎先輩って。そんな阿伏兎先輩に好意を持ち始めたのは、けっこう前から。んで酔った勢いで告っちまったのはつい最近の事。
いつもの様に阿伏兎先輩の奢りで飲みに行った時に告っちまったんだっけ。あん時は絶対引かれるなーとか思ってたのに、阿伏兎先輩はちゃんと聞いてくれて…まぁ付き合う事にはならなかったけど。
「…阿伏兎先輩、」
「今度は何だってんだ」
「……俺が告った時、なんで嘘だって思わなかったんですか?」
「何を聞いてくるのかと思えば…そんな事か」
「…ねぇ、なんでですか?」
背中合わせで作業をしているから阿伏兎先輩の顔は見えない。だから振り返ってみたら阿伏兎先輩も俺の方を向いていて……
「…坂田は嘘つくのが下手だからな。本当の事を言ってるのか嘘言ってるのかなんてすぐ分かるっての」
「……じゃあ、今も俺の気持ちは変わってないって事ぐらい分かってますよね、阿伏兎先輩」
じっと見つめてそう言ったら、阿伏兎先輩は小さくため息を吐いて頭をボリボリと掻いた。そして少し間を置いてから答えてくれた。
「坂田はまだ若いんだから、俺みたいなオジサンなんかじゃなくてもっと若い奴と付き合え」
「…今の時代に年齢だの性別だの身分だのそんなの関係ありませんって。大事なのは相手を想う気持ちなんですよ、阿伏兎先輩」
俺の気持ちをちゃんと受けとめてほしくて、思い切って抱きついてみた。嫌がられるかなって思ったけど阿伏兎先輩は何もしてこなかった。
「…俺、阿伏兎先輩が好きです」
「……やれやれ……後悔しても俺は知らねぇからなぁ坂田」
「大丈夫ですよ、後悔しない生き方をするのが俺のモットーなんで」
「…答えになってねぇっつの」
苦笑いしながらも頭を撫でてくれる先輩はやっぱ優しいな。これからはもっと積極的にキスとかしてみよっかな。
いずれはあんな事とかこんな事すんだよなぁ……やっべーなんか想像しただけで体が疼いちまいそうだ。
「阿伏兎先輩、俺の事……好きですか?」
「…さぁな」
「…素直じゃないんだからぁ」
「調子に乗んな、バカヤロー」
END
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