かみさまどうか(綱海と立向居)
※パロもどき
「よぉ、今日も放課後練習か?」
精が出るなあ、なんてにぱっと言い放つ彼のとなりには何度も何度も見たことのある、ふわふわした女の人の姿。頑張れよ、しょーねん!
名前も知らないあの人ととなりの女の人が遠ざかっていく。ある夏の、夕暮れのこと。
虚しい恋をしている。名前も趣味も年齢だって、何も知らない相手に。しかも、俺と同じ男だ。彼女だっているみたいだし。
情けない恋をしている。偶然河川敷で個人練習をしていると、あの人がちょうど通りがかった。その日は肌の見える服を着た女の人が、あの人に見て、と囁いたのがきっかけ。そのお陰であの人は俺を見てくれた。
「なあ、いつもここで練習してんのか?」
「あ、はい、まあ…」
「ふーん。頑張れよ」
それから、頑張れよ、はあの人の常套句になった。河川敷のそばを歩く度に俺にかけてくれる言葉。女の人も、たまに同じ言葉を言ってくれた。喜びはあの人からの方が大きかった。どちらにも、はい、ありがとうございます!と返事をするのが俺の日課になった。
それから何日か経った。今日は、たまたま放課後が空いているという円堂さんが練習に付き合ってくれた。日が傾き出した頃、そわそわしだした俺に、円堂さんが一言。
「飼い主を待ってる犬みたいだなあ」
いや、むしろ恋人を…?なんてにやけ顔をしだした円堂さんをちょっとだけ睨んで、こっそりため息をついた。
あの人のような、けれど少し違う太陽の笑顔。胸が焼け焦げるくらい熱くなるあの人の笑った顔でないと、俺の乾きは癒せないらしい。
「おっ、今日は二人かあ!」
「あ、こんにちは…!」
噂をすれば影。声には出さなくても、どうやらそれは有効のようだ。今日は一人きりのあの人が、聞き慣れた掠れたそれが、少しずつ音量を増して近付いてきていた。
「おう!あれ、お前円堂か?」
「綱海じゃないか!」
ん、え?
「お二人、はお知り合いなんですか…?」
何言ってンだよお前当たり前だろ、そっくり同じ顔をした円堂さんとあの人(綱海、さん?)はなにやらアイコンタクトを交わしたらしく、拳をぶつけ合った。
「なあ綱海、こいつの練習見てやってくんねぇか?」
「ん、おお。そういや名前なんてーんだ?オレは綱海条介な!」
名前を知れたくらいで何かが変わる訳でもない。期待をしてはいけないと理解していたのだけれど、暴れだす心臓は止まりそうになかった。
「立向居勇気、です」
かみさまどうかゆるしてください
(諦めきれない、この俺を)
一緒にいたのは実は妹さんだったという裏設定
盛り込む余裕がなかった
にーには知らない子にも頑張れ、って言える人だと思う
2010/5/8
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