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4.



夜通し考えて、結局自分はニッサに着いて行くことにした。
村に居たままじゃ分からないことを、外に出れば知れるかもしれない。
このまま、変わらない日を惰性で過ごすよりは良いだろうと。
翌朝、階段を降りてきたニッサに、一緒に行かせてくれと告げた。

「そう。嬉しいわ」
「にしては、随分無感動だな」
「そんなことないわよ?」

くすくす笑いながら掬い上げられる髪に、少し目を奪われた。
白とは少し違う、透き通るような銀白色。
俺の紺の髪や、キサラの茶髪と同じものとは思えなくて、少し好きだ。
そこまで考えて、気付く。
そういえば昨日は、結い上げられていなかったかと。

「…髪」
「髪がどうかした?」
「いや。今朝はまとめてないんだな」
「そりゃそうよ。起きたばっかだもの」

そのまま何を告げるでもなく、ニッサはリビングの方へ歩いていった。
昨夜、家へ帰るキサラに、ニッサはキサラの部屋で眠ると聞いた。
キサラと。
その名前に、頬が熱を持つとまではいかないが、照れを覚えた。
互いにもっと幼い頃、冗談めかして好意をキサラに告げられた事はあった。
それからは何の素振りも見せなかったのに、どうしていきなり、あんな事をしてきたのだろう。
俺が、村を出ると決めたから?
もしそうでなければ、一生あちらからは何もしないつもりだったのか。
それはなんだか癪に障る。
一度、まだ触れた感触の残る唇に触れ、自分もとリビングへ足を向けた。
出立はいつなのかも、訊かなくてはならない。

「…おはよう」

ふと。
背中にかけられた声に振り返る。
確かに耳に慣れたものなのに、どこかしら違和があった。

「キサラ、」
「ほら、早く朝ごはん食べるわよ。ニッサさん、今日中に村を出るって言ってたし」

何故キサラが知っている。
寝る前に訊き出しでもしたのか。
表情は、前髪に隠されて見えなかった。
促されるままにキサラのあとに続く。

「…元気でね、チノ」
「ああ。キサラも」
「そんなの、当たり前じゃない。私はいつだって元気だもの」

顔をしかめた。
チノ。
初めて呼ばれた名。
最初から、ずっとチーだったのに。
声を震わせているくせに、けじめでもつけるつもりか。
長くはない廊下の途中で、以前より小さく見える体を抱き寄せた。
てのひらで両目を傷付けないように覆いながら。

「や、めて…、忘れらんなくなる、から」
「…泣けばいい。俺だって泣きそうなのに」

本当に、どこまでも強がる幼馴染みだ。
こうでもしなければ泣かなかっただろう。
俺が出ていったあとで、一人で膝を抱え、嗚咽を堪えていたかもしれない。
誰よりも脆いキサラにそんなことはさせたくなかった。
手に涙が落ちるのを感じながら、心の中でキサラに謝る。
彼女を泣かせてしまったけど、それでも俺は、自分の事を知りたかった。













幼馴染み萌え\(^o^)/
キサラはほんの脇役のつもりだったのに…
次でカヴァロ出せる、かな?

2011/1/8



あきゅろす。
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