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3.



ニッサの条件は、確かに来るだろうとは考えていた。
けれど旅と言うからには、二度とこの村の土を踏むことはないかもしれないのだ。
そう覚悟する必要がある程に、外の世界は危険だと聞いている。
それに、探していると言った。
おそらく、俺の髪飾りや、ニッサの腕輪と同じものを持っている人間を探すのだろう。
ならば、余計に一筋縄ではいかない旅になる。
この世界に何人人がいるかの予想もつかないが、その中から顔も知らない人を探す羽目になるかもしれない。
この予想が正しかったとして、いったいどれだけ掛かることだろう。
地図上で見るだけでも、世界は広いのだ。
考えさせてくれ、とようやく一言呟けば、予想していたとニッサが答え、それからニッサが部屋を出ていった。
正直に言えば、両手を上げて着いていくと言いたかったのだけれど。


あれから。
どうやらニッサは、俺の答えが出るまで村に滞在することを決めたらしい。
宿屋なんて無い村だから、必然的に村長の家に泊まることになる。
慣れた家によく知らぬ他人がいる。
その違和感に、食事もそこそこに、いつもの場所へ足を向けた。
昼間とまるで違うそこは、相変わらず木や草が生い茂っている。
俺がいるから誰も近寄らないのか。
俺が来る前から忌み嫌われた場所だったのか。
どちらでも構わない、ただ一人で考える場所が欲しかったのに。

「やっぱりここにいた。そんな格好じゃ風邪引くわよ、チー」
「…キサラ、」

やはり、彼女が来てしまった。
腰に手を当て俺を見下ろす姿は、いつものキサラだ。

「ニッサさん…だっけ?彼女に誘われたらしいわね」
「行く、べきか迷ってる」
「どうして?」

率直だ。
キサラの言葉は、いつも飾り気がない。
いつも、それに救われて、いる。

「…世話に、なってる礼もせずに出てなんて行けないだろ」
「あら。私も父さんも、見返りを求めてチーと家族になった訳じゃないわよ」
「分かってる。それでも…礼はしたいんだ」

月がやけに大きく見える。
嘲笑っているのか、見守ってくれているのか。
判断は付かないけど、月の光は何かをせがんでいるように見える。

「…じゃあ、ひとつお願いがあるんだけど。いい?」
「、ん」

隣の体温が移動する。
前にキサラが来て、月が影に隠れてしまった。
互いの吐く息を感じられるほどに近い距離。
何をするかは、なんとなく分かる。
ゆるく抱き締められて、そのままゆるゆると近付いていく。
深い紺色に散りばめられた星々が、ひとつふたつ、瞬いた。












アッー\(^q^)/
チノキサは書いておきたかった
チノは鈍くはない筈…です

2011/1/5



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