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2.



追い立てるようにして、髪の長い女と別の部屋へ通された。
何を話せと言うのか。
あの人がこの場にいないのは、恐らく女が言いくるめるかしたからで。

(でなければ、見知らぬ人間と二人きりにするわけがない)

あの人は、俺を閉じ込めたがっている。
その胸のうちは知らない。
ただあまり周りと関わりを持つなと、言われた事を覚えている。

「改めて、初めまして。私はニッサ・ダル・ジャバシ。ニッサでいいわ」
「…チノ・タースュ。好きに呼んでください」

思考に沈むより先に、女、…ニッサ、から話しかけてきた。
敵意は無いと示すためか、笑顔を浮かべ左手を差し出して。
左利き、なんだろうか。

「ところで、これに見覚えは無いかしら?」

これ、とは。
握手をしたその手を差し出され、どこを見ればと視線をさ迷わせる。
ニッサは何も言わない。
俺が気付くかどうかを、試しているのだろうか。

「…腕輪、俺のと、同じ…?」
「そう。その髪飾り、中に絵が彫ってあるでしょう?私はそれを持っている人を探しているの」

心なしかニッサの声が弾んでいる。
これに、何か特別な意味でもあるんだろうか。
ニッサのものと違うのは、色と大きさくらいなものだろう。
まるでどちらかを元に、精巧なレプリカを作ったかのように。
それくらい、ふたつとも形も彫られた模様もそっくりだ。

「これ…何か、あるんですか?」

髪飾りに、つと触れる。
親兄弟のいない俺が、唯一持っていたもの。
それを見るたびに、村の大人や子どもの言う、「捨てられた子」の言葉を思い出して何度も捨てようとした。
いっそ星に潰されればと、降り始めるギリギリに、星の落ちる定位置に置いたこともあった。
あの時は、キサラが懸命に取りに行ってくれたっけ…

「教えてもいいけど、まずはその敬語をやめてくれない?」
「…は、い?」
「あんた、チノって言ったわよね。私と似たような歳みたいだし、敬語なんて必要無いの」

分かった?の、言葉と人差し指を突き付けられる。
本当は、客人にこう言われても断れと教えられたけど。
ニッサの勢いに、少し寂しそうなものが隠れていたから、文句は言わず頷いて見せた。

「うん、上出来よ。それでもうひとつ、条件があるんだけど」
「…まだあるのか」
「そりゃあね、こっちにも都合があるもの。条件が何か訊く?」
「、訊く」

満足そうにニッサが一度二度、頷く。
あまりいい予感は、しない。
何故か今日は、胸騒ぎが多い日らしい。

「私と一緒に、旅をして欲しいの」












王道が大好きです\(^o^)/

2011/1/4



あきゅろす。
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