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E si addormento(フィルシェ)


※本編数年後くらい




視界がにじむ。心なしが足がもつれる。頭が重い。最後に聞こえたのは、チームメイトのやたらに慌てた声だった。そんな悲鳴みたいな声をあげなくたって、オレは死にやしないのに。

らしくなく練習中に倒れたらしい。意識を取り戻して体を飛ぶように起こせば、見覚えのある部屋がオレの意識を迎え入れた。覚えのある匂い。オレの部屋だ。誰かが運んでくれたんだろうか。
視界の端に、起きた拍子にか落ちた白い濡れタオルを見付けた。母さん…ではないはずだ。確か今日は友達に会いに行くと言っていたし、父さんは朝から仕事に出掛けている。チームメイトがここまで運んでくれたなら、大方赤い髪をした奴がオレの鞄を漁って鍵を開けたんだろうけど。

「起きたの?」

普段より大分おとなしく開いた扉の影にはあの子がいた。相変わらず目は閉じたままだけど、まるで見えているみたいにするする進む。物が少ないせいもあるし、何回もここへ来た事があるからだろう。いつもなら当たり前に思える事に、なんだか今は頬が熱くなる。不謹慎ながら彼女の目が見えなくて良かったなんて思う。

「オレ、何でここに…? 練習してたはずなのに。それに君も…」
「倒れたんだって。ほら、あの髪の赤い人がここまで運んできてくれたのよ。私はたまたま近くを通りかかって」
「そう、迷惑かけたね」
「ううん、平気よ」

彼女の周囲の人間が彼女を一人歩きさせるはずがない。友達と買い物でもしていたのだろうか、だとしたら悪い事をした。けれどもどこか楽しそうに笑う彼女は、一言言ってから手に持っていたタオルで顔を拭いてくれた。ついでに冷たいタオルも額に乗せてくれる。寝汗をかいていたようで、濡れたそれが心地好い。

「でも、倒れたって聞いて本当に心配したんだから」

ちょうど目の辺りを拭かれている時、ぼそり、聞こえた。きっと聞かせたいとは思っていなかったんだろうけど、二人きりしかいないこの部屋ではごく小さな声すらはっきりと聞こえる。それから揃って押し黙った。彼女は丹念に汗を拭ってから、オレをちらりと見るようにしてから踵を返す。
あ、行ってしまう。鈍った頭はただそれだけを考えた。

「もう少しだけ、ここにいて欲しい」

人は弱ると思考も言動も素直になるのか。また薄れゆく視界と意識の端に、困った表情をしているだろう彼女が浮かんだ。それとも仕方無いなんて笑っているんだろうか。次に起きた時も彼女の顔を見たいなと思いながら、オレは再び眠りに就いた。




E si addormento












タイトルはそして眠りに落ちたって意味です。そのまんま!

ベタは美味しいですよね
自分のだと吃驚するくらい萌えないけどな^q^
フィディオは…多分風邪です軽めの
平気だろうと放置してたらふらっときちゃった、みたいな
女の子の名前を早く知りたいです…!

2010/7/3



あきゅろす。
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