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物語
第2話 天空人と地上人、そして決意





???「私はネリア・フェニスだ。だから、ココはどこだと言っている」






【第2話 天空人と地上人、そして決意】






その少女は不満げな顔で周囲を見回してそう言った。


ガザフ「此処は君の住む世界とは別の世界…アスピアの世界首都ルイセンド王国近くの森だ」
ネリア「は…はぁ?!ど、どうして私はここに…ハッ、そうか、私は確か…」
フレイ「その様子じゃ…何らかの形でアスピアへと来たんだな」
ガザフ「しまったな…彼女をどうやって公に晒さず俺たちの家まで連れて行けるか考えねぇと」
フレイ「そうだな…ヘタすりゃ俺ら英雄になるか指名手配になるかの究極の選択だもんな」

そう二人が悩んでいる時に、ネリアという少女は叫び声にも似たような声をあげた

ネリア「このアスピアでは、死ぬことが出来る世界なのだろう?!!そう聞いてこの世界に降りてきたのだ!!」
ガザフ「…ッ!?」
フレイ「な、なに言ってんだ…おまえ」

驚いた。次に口が開いたかと思えばその発言。
冗談かと思ってその顔を見てみれば、その瞳と表情は真剣そのもの。

ネリア「生きているのが嫌なのだ。死にたい…だからお願いだ…死ねる所へと私を連れていってくれ!」
ガザフ「おいおい嬢ちゃん?!急に早まるな!冷静になってくれ!…それに―」
フレイ「…ざけんな」

そうフレイは小さな声でつぶやくと、自分の着ていた変装用のフードつきの黒いロングコートをネリアに無理やりかぶせ、口を覆うようなマスクを外すと、ネリアの腕をつかんで無理やり立たせどこかへと引っ張り歩き始めた。
急なフレイの行動にネリアのみならずその後を追うガザフも驚いた表情を隠せずにいた。

ガザフ「お、おいフレイ!!お前何する気だ!!」
ネリア「き、貴様…急に何して…ッ、腕が痛い、離せ―」
フレイ「おれはな、死ぬっていう言葉が一番大嫌いなんだよ」

フレイはネリアとガザフの顔を見ず、前を向いたままそう言った。
いつもより低めな声で言った彼は、どうやら怒っているように感じる。

ネリア「お前に何がわかるのだ…我々天空人の苦しみを…ッ」
フレイ「ぁあ、知らねぇ。だって俺は、お前ら天空人のこと何も知らないからな。でも、おれは少なくとも…自ら命を絶つのは、どの種族関係なく、あっちゃいけないことだと思ってる」
ガザフ「!!…フレイ、お前」
フレイ「おれ間違ったこと言ってるか親父?言ってるなら遠慮なく殴ってもいいんだぜ」

そう言いながら前を尚も歩き続けるフレイの後ろ姿を見つめながら、淡々とガザフは話し始めた。

ガザフ「ったく…おまえと俺は親子でもないくせに…俺に似たようだな…」
フレイ「血なんか関係ねぇだろ?親子は親子だ、似るに決まってる、ずっと一緒にいればさ…で、答えは?」
ガザフ「親子だから考えも似る…答えはいらないだろ息子?」
フレイ「決定だな」
ネリア「な、おい!!お前ら二人して勝手に話を進めるでない!いいから私を死なせ―」

尚も暴れるネリアに、一度歩みを止めたフレイはネリアの方を向いた。

フレイ「死なせない」
ネリア「な…ッ?!」
フレイ「俺は何としてもお前を死から、世界から守ってやる。俺と一緒に来い」
ネリア「嫌だ…と言ったら、どうするのだ?」
フレイ「どっちにしろ、この世界で一人で歩いてみろ。お前が天空人と知ったら、世界の奴らはお前を人殺しの道具にしておしまいだ。死ぬこともできず…永遠にな」
ネリア「な…それは嘘だ!スカイピアではアスピアに行ったものは即刻死刑ですぐ死んでしまうという法律があると聞いている」
ガザフ「それは本当だが…フレイの言っていることも事実だ」
ネリア「…ッ、どういうことなのだ…?」

フレイの驚きの発言を聞いたネリアは、整理できていないようで動揺している。

フレイ「昔はそれだけで済んでたらしいが、今は違う。腐ってるこの世界ではな、死刑よりもつらい刑罰があるんだ。しかもそれは…ごく一部の者しか知らないことだけどな」
ネリア「いいからもったいぶらずに教えてくれ!!」
ガザフ「さっき言ったろ?「殺しの道具にされる」っと」
ネリア「…―!まさか…ッ?!」
フレイ「そう、今アスピアでは、地上人同士の戦争が起こっているんだ。その為に、やってきた天空人を生かさず殺さず、自分の命が尽きるまで一生殺しの道具として戦争に駆り出されるんだよ」
ガザフ「捕えられた天空人はな、身体の中に埋め込まれた、心魔器(ブラスピリア)によって精神・意思を破壊させられ、文字通り「殺しの道具」…魂がない生きる屍となるんだ」
フレイ「その他にも心魔器(ブラスピリア)はどんなに深い傷を負ってもすぐに治る機能も持ってる。つまりー」
ネリア「死ぬこともできずに人を殺す道具に…そんなことが…酷い…ッ」

あまりの衝撃的な事実にネリアは下を向いて肩を震わせながらそう言った。
そんなネリアを見たフレイは、うつむきながら…震えたような声で言葉を放つ。

フレイ「…じつはな、天空人だけじゃないんだ」
ネリア「ぇ…」
ガザフ「俺たち地上人も…この世界に不必要…つまり悪影響を与える種族だと判断したものは、もちろんその種族をなくすためにその住処を、種族が住む街へと赴いて連行したあと殺したりしているわけだが」
フレイ「でもあえて殺さず、天空人と同じようなことをしていると聞いた事がある…あくまで噂だけどな…。まぁ本当だろうけど」
ネリア「同胞同士の争いか…醜い」
フレイ「ぁあ…俺はこの世界が嫌いだ。だから、この世界を変えたい。こんな醜い行動を止めたいと思ってる」
ガザフ「おれは首都騎士団の総指揮官を務めているが、そいつらはその戦争のための道具にはさせず、街を守るための護衛として行っている。だが。こんな世界では護るものも守れない。だから、おれもこの世界を変えようと思う」
ネリア「そんな事…できるわけなかろう」
フレイ「やってみなくちゃわからないだろ?誰かが行動起こさなきゃいけない…だったらおれが行動を起こすだけだ」
ガザフ「その為には世界を見ていかなきゃってことでな…実は明日旅立とうとしていたところなんだ」
フレイ「だから俺はお前をそんな奴らの道具にさせたくないんだ。誰かの道具にされたいのか?人殺しのための道具として一生生きる…それはお前の本望なのかよ?」
ネリア「…」

しばらく沈黙が続いた、いや、気がした。たぶん1分は立ってないだろう。
そして、沈黙を割いたのは…ネリアだった。

ネリア「もう、誰かの為に死んでいくのは…もう、ごめんだからのぅ……わかった、ついていこう」
フレイ「よし、決まりだな」
ネリア「だが…死ねる方法が見つかったら…私はお前らから離脱する。それが条件だ」
フレイ「な…お前まだ!」
ネリア「死にたい…これは変わりはしない。ただ殺しの道具やだれかのために殺されるのはいやなだけ…それだけだ」
フレイ「…そうかよ、わかった。絶対…見つけさせねェ、絶対死なせないからな」
ネリア「ハッ、どうなんだか」

険悪なムードな二人にガザフは内心不安な色を見せた。

ガザフ(こんなんで…この先の旅やっていけるのか不安だ…;)
ガザフ「と、とりあえず城へ戻ろう!そろそろパーティが始まるからな…ほらフレイ、予備の変装だ」
フレイ「あ、ぁあ…予備持ってたのか…ありがとう親父。…行くぞネリア、あと痛いところはないか?」
ネリア「ふん、命令するな…うるさいガキが」
フレイ「なんだよ!?人が心配してるのに―」
ガザフ「ぁああああもうやめろお前ら!!!いいから城に戻るぞ!!」

本当…このパーティで旅ができるのか本気で心配してきたガザフであった。









遠くからその三人を見つめる男の影が一つ。
口角を上げて、それを見た彼は小さな笑い声をこぼしながらこう言った。

???「あの三人…面白そうやな…ふふ」










第3話につづく

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あきゅろす。
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